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送りつけ商法に関するトラブル

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  • 送りつけ商法に関するトラブル

    先日、社会問題関係の者と言うものから電話がかかってきました。社会問題に関する書籍を出版しており、是非とも協力してくれというふうに言われ、65,000円の本の購入を勧められました。初めは断っていたのですが、だんだん脅迫めいた口調に変って来て、あまりにしつこいので、一度検討しますと言って電話を切りました。ところが、後日、本と請求書が送られてきました。できれば断りたいのですが、断っても大丈夫でしょうか。

    1.「検討します」とお返事されており売買契約は成立していません。毅然とした態度でお断りになることが大切です。また、本の返送の義務もありません。

     (1) ネガティブ・オプションの場合、売買契約は成立しない

      「一度検討します。」と回答されて、お電話を切っておられますので、購入する旨の意思表示はなく、売買契約は成立していません。ですから、代金の支払義務はありません。
     事業者が、商品購入の申込みを受けていない者に対して、一方的に商品の送付をすることを、ネガティブ・オプションと言います(特定商取引法59条)。
     売買契約が成立するには、当該商品の売買について当事者双方の意思表示の合致が必要となります。一方的に送りつけてきた商品を受け取っただけでは、未だ購入の意思を表していないのですから、ネガティブ・オプションの場合には売買契約は成立していません。普通に考えれば、「買うと言っていないものを勝手に送りつけてきて、どうしてお金を支払わなければならないのか」ということになると思いますが、法律論からいってもそのとおりです。

     (2) 本の返送義務について

     また、相手方が一方的に送りつけてきているわけですから、送付されてきた本を返送する義務もありません。例えば、請求書に「返送なきときは購入したものとして扱う」と記載されていた場合でも、返送の義務はありませんし、返送しなかったとしても売買契約は成立しません。
     但し、送りつけられた商品は、送った業者の所有物ですから、勝手に処分することはしてはいけませんし、送付されてきた物を使用・消費したときは、購入を承諾する行為として評価されます(民法526条2項)。
     また、送りつけられた商品については、保管義務が発生し、自己の財産と同一の注意をもって保管する義務を負うことになります(民法659条)。
     しかし、何時までも保管しておくわけにもいきません。そこで、特定商取引法に規定がおかれています。



    2.商品を受領した日から14日を経過する日までに、又は、商品の引き取りを請求したときは、請求日から7日を経過する日までに、商品を引き取りにこない場合には、事業者はその商品の返還請求権を失います。

     一方的に商品が送りつけられてきた場合、
     ① 商品を受領した日から14日を経過する日までに、
     ② 又は、商品の送付を受けた者が販売業者に対してその商品の引き取りを請求した場合には請求の日から起算して7日を経過する日までに、
     その商品の送付を受けた者がその商品の購入を承諾せず、かつ、販売業者がその商品の引き取りをしないときは、その送付した商品の返還を請求することができないとされています(特定商取引法59条1項)
     このように送りつけてこられた日から起算して14日を経過するか、引き取れという請求を行ってから7日を経過すれば、送付されてきた商品の購入を承諾しない限り、販売業者はその商品を返してくれとは言えなくなります。
     従って、この期間が経過すれば、送られてきた商品を廃棄してもかまわないということになります。
     但し、この規定には例外がありますので注意が必要です。


    3.但し、商品の送付を受けた者が事業者で、かつ、その事業のために使用する商品が送付されたような場合には、2に記載した法律の適用がありません。

     (1) 商行為の場合、特定商取引法59条1項は適用されない

     2に記載した特定商取引法59条1項には例外が定められており、商品の送付を受けた者にとって商行為となる場合は適用されないことになっています(特定商取引法59条2項)。
     例えば個人事業者の方が、その方の事業のために使用する商品が一方的に送付されてきた場合には、2に記載した効果は発生しません。

     (2) 事業と関係のある商品が送られてきた場合は要注意!!

     事業と関係のある商品が送られて来たときには、2に記載した販売業者が返還請求権を失うという規定の適用はなく、1に記載したとおり返還する必要はないけれども自己のものと同じ注意をもって保管しなくてはならず、販売業者が引き取りに来れば返還しないといけないということになります。


    4.内容証明郵便で送付してきた販売業者に引き取るよう請求するか、返送したほうがよいでしょう。

     上記のとおり売買契約は成立していませんし、それを承諾する義務もありませんから、代金の支払義務はありません。また、商品の返還義務もありません。
     しかし、商品を送付した業者が後で申込みを受けたとか、商品をどこにやったというようなことを言ってくることを避けるためにも、一方的に送りつけられて来たものであって売買契約は成立していないこと、商品の引き取りを要求することを記載した内容証明郵便で送付することが好ましいと思われます。また、売買契約不成立の内容証明郵便とともに商品を返送してもよいでしょう。


    * 内容証明の書き方につきましては,当該「よくある質問」コーナーにも書式例がありますので参考にしてください。


     さて、今回は「検討します」と答えてしまった場合ですが、「送ってください」とか「購入します」と言ってしまった場合はどうでしょうか?この場合、ネガティブ・オプションにはなりません。別の対処法が必要になりますので、専門家にご相談ください。


    コラム

    ① 「会社の行為は全て商行為になる」という考え方

     株式会社や有限会社のような会社は、法律上の商人とされています。そして商人がその営業のためにする行為は商行為とされています(商法503条1項)。会社の行為は全て営業のためにするもの=商行為となるという考え方があります。
     この考え方は有力な立場なのですが、このように考えると、一方的に送りつけられてきた商品を株式会社や有限会社が受け取ってしまうと、その商品の送付を受けた者にとって商行為であるとされてしまい、2の特定商取引法59条1項の規定の適用がされないことになってしまいます。
     あなたの会社が、書籍店であれば別でしょうが、社会問題を取り扱った書籍と会社の事業とが全く関係のない場合にも保護されないとするのも不合理だという疑問が起こってくると思います。

    ② 「会社の行為であっても商行為でないものもある」という考え方

     この点、商法503条2項という規定があり、「商人の行為はその営業のためにするものと推定す」となっています。この規定では、推定するということになっていますから、逆に言えば、主観的にも客観的にも営業のためではないということであれば商行為ではないということになります。
     この規定を株式会社や有限会社その他の会社にも適用を認めて、主観的にも客観的にも営業のためにするものではない場合には商行為ではないということにしようという立場があります。この立場に立った裁判例としては東京地裁平成9年12月1日判決・判例タイムズ1008号239頁があります。
     この立場に立つと会社の事業とは関係のない商品を送りつけられた場合には、2の特定商取引法59条1項の適用をうけることができることになります。

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