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支払ってくれない売掛金の回収

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  • 支払ってくれない売掛金の回収

    当社は取引先に対して,商品販売の売掛金として500万円の債権を有しています。すでに約束の支払い期限は経過しており,何度か請求書を送りつけたり,電話などで催促しているのですが,いっこうに支払ってもらえません。このような未収の売掛金を回収するためにはどのような方法があるのでしょうか。なお,本件では当該取引先から手形などは受領していません。

    1.任意の支払を促す方策として、弁護士名による内容証明郵便による督促があります。
    設例では,既に書面も含め何度も請求をされているとのことですから,その後に取るべき方策としては,弁護士に依頼して,当該債権に係る金員(お金のこと)を支払うよう請求する内容の内容証明郵便を送付してもらうことが考えられます。
     債権者が弁護士に相談し,事件処理を依頼していることがわかれば,債務者としても,今後訴訟提起等がなされることを恐れて支払に応じることが結構あります。ただし,この方策は,当該取引先に強制的に支払わせることはできず,あくまで任意の支払を求めるものにすぎません。当該取引先が任意に支払わない場合には,次の方策を取らねばなりません。
      
    * 内容証明郵便の書き方につきましては、当該「よくある質問」コーナーにも書式例がありますので参考にしてください。

    2.公的な話し合いの場を求めて調停を申し立てる方策があります。
    調停は,簡易裁判所において,調停委員会(通常は担当裁判官と調停委員2名の合計3名です)の関与のもとに,相手方との間でこの売掛金を支払ってもらうための方法についての話し合いをするというもので,あくまでも双方の譲りあいの精神にもとづく話し合いの成立を要件としており,そもそも話し合いの余地がないという場合には効果はありません。
     うまく調停が成立した場合には,相手方もその内容に同意しているわけですから,その履行が相当程度期待できるというメリットがあります。また,裁判所において話し合いの成立内容を明記した調停調書を作成され,この調停調書は上記の債務名義(次項参照)の効力を持つものですので,万一その内容が履行されなかった場合にも,その効力をもって,下記の強制執行をすることが可能です。
     公の場で話し合いをすればまとまる可能性がある場合には利用価値のある方法だといえます。

    3.強制的に支払を実現する方策があります。
    当該取引先が貴社の任意の支払請求や調停に応じない場合には,国家権力をもって強制的に支払を実現する手立てを講じる必要があります。この手続を利用するには,当該取引先に対して確かに一定の支払請求権があり,それに基づく強制執行が許されることを公的に証明した文書が必要となります。これを債務名義といいます。債務名義を取得するための方策としては,(通常)訴訟、支払督促、少額訴訟があります。

    ① (通常)訴訟
     訴訟を提起して勝訴した場合の確定判決は債務名義の代表的なものですが,訴訟を提起して判決をもらうまでには,証人尋問等を行う必要が出てくる等,一般に相当の日数(月単位の日数がかかるのが通常です)を要します。

    ② 支払督促
     そこで,より簡易に債務名義を取得できるよう,通常の訴訟手続とは異なる手続が用意されています。その一つが支払督促です。支払督促の申立は簡易裁判所で行いますが,申立をすると相手方の意見を聞くことなく支払督促が発せられ,相手方が2週間以内に異議を申し立てなければ,仮執行宣言を付けることができ,これで債務名義を取得したことになります。ただし,債務者が異議を申し立てれば,通常の訴訟に移行します。

    ③ 少額訴訟
     また,少額訴訟という30万円以下の金銭請求にのみ利用できる簡易な手続も用意されています。簡易裁判所に申立をするもので,原則として1回の期日で審理が終了します。ただし,この手続も相手方が通常の訴訟手続で行うことを希望すれば,通常の訴訟に移行します。


     上記各手続により債務名義を取得すれば,仮に相手方がその後も支払をしないでいる場合でも,相手方の預金等の財産から強制的に支払わしめることができます(強制執行)。ただし,そうした強制執行をするには,その対象となる当該取引先の財産をある程度把握しておかねばなりません。例えば,当該取引先がどの銀行のどの支店に預金を有しているかとか,どの会社に対して売掛金債権を有しているか等の情報を取得しておく必要があります。
     もっとも,貴社が上記のような債務名義を取得する手続を申し立てたとなれば,相手方としても,債務の存在自体を争っていない場合には,これ以上支払を遅延させることはできないと観念し,債務名義を取得するまで至らなくても,申立をした時点で支払に応じることも相当程度の割合であるでしょう。こうした効果も期待して,上記手続を申し立てるわけです。


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