今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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個人事業主として弟と2人で理容店を営んでいます。ある日、消火器の訪問販売の営業が店に来ました。あまりに営業がしつこかったので契約書にサインしましたが、キャンセルはできないでしょうか。
状況によっては、錯誤・詐欺取消やクーリングオフの可能性もあります。
いったん契約書にサインをした場合であっても、絶対に契約の効力を覆すことができないわけではありません。
まず、実際には5万円程度の消火器なのに「本当ならば20万円するが、当社ならば10万円で販売できる」などと営業の際に言われた内容が事実と大きく異なる場合は、購入の基礎となる事情に錯誤があったとして取り消すことが考えられます(民法第95条第1項第2号)。しかし、営業の際にそのような話があったことや、その話を理由に契約することを契約の相手方に表示したことを立証する必要があります。このほか、詐欺による取消し(民法第96条第1項)も考えられますが、営業のやり方が違法であることなどが要件となり、その立証は必ずしも容易ではありません。
他方、特定商取引法等によるクーリングオフであれば、比較的容易に契約を取り消すことができますが、一般的には、個人であっても営業のために締結した契約は適用除外となります。しかし、その契約が営業の規模はどの程度か、営業と直接的な関係があるかどうか、営業における勧誘に悪質性があるか等の事情を勘案してクーリングオフを認めた裁判例もあります。
ご質問の場合でも、2人で営業する小規模な店舗において、消火器については店舗の営業と直接関係がなく素人である店主に対し、クーリングオフ適用回避のために店名のゴム印の押印を執拗に求められたといった事情がある場合は、クーリングオフの規定が適用され、クーリングオフにより契約を取り消すことができる可能性もあります。
とはいえ、いったん契約書にサインしてしまうとそれを覆すのは容易ではありません。営業がしつこい場合であっても「検討します」などといって退去を促すなどし、安易に契約書へサインをするのは絶対に避けるべきです。
(回答日:2026年2月27日)