今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
甲社は、特許出願Aを行った後に、その特許出願Aで権利化したい発明αを利用した製品を販売していますが、最近、自社製品の模倣品を見つけました。模倣品は乙社が販売しています。甲社はどのような対応を取る必要がありますか?
早期権利化及び補償金請求のための対応を取ることが必要です。
以下、特許出願Aについて、甲社が出願審査の請求(特許庁に対し審査をお願いする手続き)をしていない状況として説明します。
(1)早期権利化について
・乙社の模倣品は、甲社の製品の売上げに影響を与えるため、直ちに乙社に対し模倣品の販売停止(差止め請求)を求めたいところですが、特許出願Aはまだ権利化されておらず、特許権が発生するまで、甲社は、乙社に対し販売停止を求めることができません。
・そのため、甲社は、直ちに、「出願審査の請求」を行う必要があります。このとき、特許庁の審査を早めるために、中小企業であれば「早期審査」を請求することがきます。これにより、出願審査の請求から審査着手までの期間が、通常であれば1年ほどであるところが、2〜3ヵ月ほどになります。なお所定の条件(外国関連出願であることなど)を満たせば、早期審査よりもさらに早く審査結果を得られる「スーパー早期審査」を利用することもできます。
・特許出願の権利化の過程では、出願人が権利化しようとする範囲を狭めざるを得ない場合がありますが、甲社は、乙社の製品が権利範囲に含まれるように、さらには乙社が設計変更によって権利範囲から容易に逃れることができないように、特許庁の審査に対応する必要があります。
(2)補償金請求権について
・特許法では、特許権が発生するまでの期間における出願人(本事例では甲社)の保護を目的として、「補償金請求権」が規定されています。補償金請求権は、特許権が発生するまでの期間の模倣品の販売に対し、模倣者にライセンス料相当の金額を請求できる権利であり、特許権が発生した場合に限って、行使することができます。
・但し、補償金請求権を発生させるためには、模倣者に対し、発明の内容を記載した書面を提示して警告を行う必要があります(つまり、警告なしで補償金請求権は通常発生しません)。また、警告のタイミングは、特許出願の「出願公開」の後でなければなりません。ここで、出願公開は、特許庁が、出願された発明の内容を一般に公開することであり、特許出願の日から1年6ヶ月後に行われます。
・甲社は、既に特許出願Aの出願公開がなされている場合、直ちに乙社に対し、特許出願Aに係る発明αの内容を記載した書面を提示して警告を行う必要があります。一方、特許出願Aの出願公開がまだなされていない場合、出願公開を1年6ヶ月よりも早める手続きとして、特許庁に対し出願公開の請求手続きを行い、出願公開後に警告を行います。
・なお警告は、乙社に対し、「特許が認められるおそれがあるから、模倣品の販売を止めよう」と思わせる効果も期待することができます。
(3)その他
・上記以外で、訴訟に備えて、模倣行為を証明するための証拠を早急に集めることも重要です。証拠集めは直ちに行う必要があります。
(回答日:2025年10月6日)