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越境ECの事業環境にも影響があると聞きました。概要を教えてください。
越境ECの拡大による少額輸入貨物量の増加を背景として、各国で規制強化の流れにあります。
日本を含めた各国では一定の課税金額を下回る少額輸入貨物に対して、輸入申告項目の一部を省略可能とする簡易な通関手続き(少額貨物簡易通関扱い/一部貨物を除く)を適用し、又一定条件を満たすものについては関税(及びVATを含む場合あり)を免除する「少額免税制度」の仕組みをとってきました。日本では原則として、簡易通関扱いは課税価格20万円以下、この内少額免税制度は課税価格1万円以下(海外で小売取引され、個人使用に供される貨物は16,666円以下)となっています。これらは円滑な通関手続きや納税の事務負担軽減を意図したもので、デミニミスルールと呼ばれる「法は仔細なことにこだわらない」という考えに基づくものです。
最近各国で少額輸入(免税)貨物に対する規制強化の動きが顕著になっています。個人が簡単に海外からネットショッピングできるようになり、越境EC(電子商取引)による個人向B2C貨物量が爆発的に拡大していることが背景です。日本では、少額免税貨物の輸入件数が、中国/韓国原産品を中心に2023年には、約1億7000万件と数年前の4-5倍に膨らみ、全輸入許可件数の約9割を占めるに至りました。主にB2B向業務の通関を想定している現行制度が、B2C貨物の増加にキャッチアップできていない部分があり、もはや仔細ではない状況です。これは世界的な傾向であり、(免税対象外)国内事業者との不公平感、不正輸入の懸念(薬物、知財侵害品目等)、徴税機会の損失などが顕在化、各国で規制強化の動きになっています。
米国では少額免税基準が800ドル以下と比較的高かったこともあり、現トランプ政権は従来のデミニミスルールの廃止を決定、中国/香港原産品に続き、25年8月29日から全世界向に対象が拡大しました。中国の越境EC大手は、価格値上げや消費者への直接配送の停止などの対応が報道されています。これ以外にも付加価値税(VAT)の少額免税制度が欧州、大洋州、東南アジアの一部で廃止されるなど、規制強化の流れは継続しており、日本でも政府内で論議が進んでいる旨報道されています。少額輸入貨物の増加に伴う問題やその対策は、関税/VATの税率や徴税・通関手続きに係る事務コスト/対応力等によって国毎に変わってくる可能性がありますので留意が必要です。尚、上記内容は本稿執筆時点(25年9月)のものであり、今後変更の可能性がありますので留意ください。
(回答日:2025年10月6日)