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著作権で保護される対象は著作物です。著作物は、「思想または感情を創作的に表現したもの…」と定められています。では、企業理念やスローガン(以下「企業理念等」と記載)は著作物として、著作権で保護されるものでしょうか?
企業理念等は、著作物となり難く、著作権法で保護されない可能性があります。
企業理念等のような短い表現は、「創作的に表現したもの」でないとして、すなわち創作性が否定されて、著作物ではないと判断され易いです。例えば、雑誌の見出しである「マナー知らず大学教授、マナー本海賊版作り販売」、「A・Bさん、赤倉温泉でアツアツの足湯体験」「道東サンマ漁、小型漁船こっそり大型化」等は、裁判例で著作物性が否定されています。
しかし、企業理念等のような短い表現でも、その表現によっては著作物となり得るものもあります。例えば、交通標語「ボク安心ママの膝よりチャイルドシート」は、短い表現ですが裁判例では著作物であると判断されています。もっとも、このように創作性が低くても著作物となるようなもの(著作物となる限界事例)は、その著作物に類似する範囲が狭いと解釈され易いです。例えば、上述した交通標語「ボク安心ママの膝よりチャイルドシート」の裁判例では、「ママの胸よりチャイルドシート」とは非類似だと判断されて、著作権侵害ではないと判断されています。従って、著作物であると判断されても、表現を少し変えれば非類似となり著作権侵害にならない可能性があります。
上述したように、企業理念等は、著作物になり難く、著作権で保護されない可能性があります。従って、商標権による保護も検討した方が良いと思われます。企業理念等は、自他商品識別力(何人かの業務に係る商品等であることを需要者に表示させる作用)がないとして、商標権の保護対象ともなり難いですが、一定の場合には保護されます。企業理念等が独創的な表現である場合や、以前から企業理念等を商標的に使用している場合には、商標権の取得を検討してもよいと思われます。
(回答日:2025年9月30日)