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税理士が行う書面添付により、税務調査が入りにくくなると聞いたことがあります。書面添付の概要やメリットを詳しく教えてください。
書面添付は正しい決算申告の証明書であり、複数のメリットがあります。
書面添付制度とは、法人や個人の決算申告書に対し、税理士が「どの項目を」「どの資料で」「どの程度確認し」「どのように判断したか」を記載した書面を添付する制度です。これは税理士のみが行える仕組みで、正しい決算申告の「証明書」の役割を持ちます。
メリットは大きく2つあります。
1つ目は、税務調査の確率が大幅に低下する点です。書面添付には税務調査で確認される事項が記載されており、調査官たちが確認したい内容をあらかじめ税理士が確認・検討しています。そのため、調査する必要がないと判断され、税務調査の対象から外れることとなります。
2つ目は、仮に調査となっても事前に論点が整理されているため、日数・時間が短縮され、調査の負担やストレスが軽減される点です。
ただし、これらのメリットは書面添付の「品質」に大きく左右されます。品質が良好な書面添付は売上・仕入・棚卸(在庫)・減価償却費等を具体的に検証し記載している一方、良好でない書面添付は記載が抽象的で、どの会社にも当てはまる内容に留まり、税務署は調査省略を判断できません。つまり、書面添付の品質は、税理士が顧問先の事業内容と取引内容を理解した上、会計処理や税務判断を適切に行えているかどうかと言えます。
現状、顧問先の事業内容と取引内容を理解し、会計・税務の処理を行っている税理士はかなり少ないです。そのため、法人税の書面添付割合は約10%に過ぎず、そのうち良好なものはわずか1%程度と極めて少ないのが実情です。
良好な書面添付が少ない理由は、①書面添付自体を目的化し件数アピールに使う事務所が多いこと、②制度趣旨を理解せず形骸化していることです。本来の趣旨は「税務執行の円滑化・簡素化」であり、税理士が責任を持って証明書を添付することで税務調査を不要とさせる制度です。
したがって、制度の本質を理解し、適切な経理水準に基づく高品質な書面添付であれば、税務調査ゼロの実現が可能です。
(回答日:2025年9月30日)