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2006年施行の会社法改正により有限会社は新たに設立が出来なくなったと聞きました。しかし、今でも有限会社のままで会社が存続していますが、株式会社に移行しなくても大丈夫でしょうか?有限会社のままでいるメリット・デメリットを教えて下さい。
理由がなければ有限会社のままで問題ありません。もし株式会社に移行するとしてもメリット・デメリットを把握して必要なときにすれば問題ありません。
2006年以降新たに有限会社を設立することは出来なくなったのに今でも有限会社があるのは、2006年より前に設立された有限会社が法律上株式会社として存続しているからです。また、このような会社は通常の株式会社と比較して「特例有限会社」と呼びます。
特段理由がなければ有限会社のままで問題ありませんし、株式会社に移行するとしても下記に記載するメリット・デメリットを把握して、必要なときに移行すればそれで問題ありません。
【(特例)有限会社のメリット】
①役員の任期制限がない
株式会社の場合、取締役の任期は最長でも10年でありその度に重任登記をする必要があります。しかし、有限会社の取締役には任期がありませんので、会社のビジョンや戦略を一貫して推進しやすく、企業の安定性を高めることができます。また重任登記をする必要もないので費用も最小限に抑えることが可能です。
②運営の自由度が高い
特例有限会社は決算公告の義務がないため、経営の透明性は維持しつつも柔軟な運営が可能です。また、取締役会の設置が不要なため、経営者にとっては運営の自由度が高いと言えます。
③意図しない第3者が知らぬ間に株主になることがない(株式の譲渡制限が必ずある)
特例有限会社は、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」と呼ぶ)の第9条に基づき、株式の譲渡制限が必ずあることになります。
株式の譲渡に関しては以下の規定が定款にあるものとみなされます。
・第3者が株式を取得するときには会社の承認が必要(株主総会で承認)
・株主間の株式譲渡は会社が承認したものとみなす
したがって意図しない人間や会社が株主になることを未然に防げます。
【(特例)有限会社のデメリット】
①上場企業にはなれない
メリットの③で書いたように有限会社の株式は譲渡制限がありますが、上場するためにはその株式について譲渡制限が無いことが要件となっています。そのため、特例有限会社のままでは上場企業にはなれないという事になります。
②吸収合併等の組織再編が出来ない
特例有限会社は整備法37条により吸収合併存続会社や吸収分割承継会社になることが出来ません。また、整備法38条により株式交換・株式移転、及び株式交付の手続にかかる会社法の規定について、その適用が除外されています。
基本的に組織再編関連でデメリットが露見することが多いので、そのタイミングで株式会社に移行するかどうか検討するのがいいと考えます。
(回答日:2024年9月3日)