今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
法人で青色申告事業者です。なんとなく毎期繰越控除を使っている事が多いのですが、繰戻還付という制度があることを知りました。両者の違いと使い分けについて教えて下さい。
「欠損金の繰越控除は、将来の利益から損失を控除して税負担を軽減する制度、繰戻還付は、前事業年度の法人税を還付して即座に資金を調達する制度」です。
まず簡単にそれぞれの制度の概要・ポイントを紹介します。
【欠損金の繰越控除制度】
欠損金の繰越控除制度は、ある事業年度に生じた欠損金(損失)を翌事業年度以降に繰り越して、将来の所得から控除することができる制度です。これにより、欠損金を将来の利益と相殺することで、税負担を軽減することが可能になります。
・繰越可能な期間は通常10年間です。
・繰越控除を受けるためには、青色申告を行っている必要があります。
・繰越控除を受ける際には、その都度申告が必要です。
【欠損金の繰越還付制度】
欠損金の繰戻還付制度は、ある事業年度に生じた欠損金を前事業年度に繰り戻して、前事業年度に納めた法人税の還付を受けることができる制度です。
・繰戻し対象となる欠損金は、原則として前事業年度の所得の範囲内に限られます。
・繰戻還付を受けるためには、青色申告を行っている必要があります。
【両者の使い分け方】
企業の財務状況や戦略に応じて、以下のように使い分けることが重要です。
◯繰越控除制度を活用したほうが良いケース
・将来的な利益が見込まれる場合: 将来の税負担を軽減するため
・短期的に資金が必要ない場合: 繰越控除を利用して将来の利益と相殺
・安定的な利益を計上している場合: 継続的に利益がある企業に適する
◯繰戻還付制度を活用したほうが良いケース
・即座に資金が必要な場合: 短期間で資金を調達
・短期的な資金繰りが厳しい場合: 繰戻還付を利用して資金繰りを改善
・前事業年度に高い税率で法人税を納めた場合: 高い税率での還付を受けることで有利
【まとめ】
欠損金の繰越控除制度と欠損金の繰戻還付制度は、企業の税務戦略とキャッシュフロー管理において重要なツールです。将来の利益と相殺することで長期的な税負担を軽減する繰越控除制度と、短期的な資金調達を可能にする繰戻還付制度を、企業の状況や目標に応じて適切に使い分けるといいですね。
(回答日:2024年9月3日)