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ある日突然聞いたことがない労働組合から団体交渉の申入れがありました。能力不足を理由に解雇した従業員が加入したようです。すでに退職した従業員ですので、団体交渉に応じなくてもよいでしょうか。
退職した従業員に関する団体交渉であっても誠実かつ冷静に対応しましょう。
企業にとっては、既に退職している従業員であるとしても、当該従業員からすれば、従業員は労働契約が終了していないと考えているからこそ労働組合に加入し、企業に対して団体交渉の申入れをしています。また、そもそも、労働組合法上、労働者というためには、必ずしも労働契約が締結されているかどうかが要件とされているわけでもありません(労働組合法第3条)。
したがって、団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むと不誠実断交(労働組合法第7条第2号)として不当労働行為となるため、労働委員会による団体交渉を命じる旨の確定した救済命令に従わない場合は、過料や刑事罰といった法的な制裁のほか、労働組合による街宣活動やビラ配布により企業の社会的信頼度が著しく低下することも十分に考えられます。
団体交渉において、労働組合は、必要以上に社長の感情をあおるような表現を用いた主張をしたり、明らかに法的な根拠がないのではないかと首をかしげざるを得ないような主張をしたりします。しかも、そのような主張であっても、労働組合はあたかも法的な根拠のある正当な主張であるかのように堂々と主張をしてくることも珍しくありません。
これらの主張に対しては、感情的な対応をしてしまいがちですが、企業としては、あくまで法的な観点に基づく主張を冷静に粛々としていくことが重要であるといえます。
絶対に受け入れることのできない労働組合からの要求に対しては、誠実に交渉を行ったのであれば、団体交渉を打ち切っても不誠実団交にはなりません。
したがって、企業は団体交渉を行う前に労働組合から想定される提案について、応じる余地があるのかどうかについて、労働組合に説明できる根拠とともに十分に検討しておくことが重要であるといえます。
(回答日:2024年9月1日)