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外貨建で輸入取引をしていますが、円安により採算が悪化しています。
為替変動にあわせ、外貨建単価を調整するスキーム(特約)を交渉することが可能と聞きました。
概要を教えてください。
取引相手と為替差益/差損を折半するものであり、特約の効果を検証した上で、交渉し合意する必要があります。
貿易取引の決済を自国通貨以外(かつ外貨固定)にした場合、当事者に外為変動リスクが発生します。現在、日本への輸入における円建決済割合は23.5%(令和6年上半期/財務省発表)であり、約3/4が外貨建決済で米ドル建が全体の約7割を占めます。
外貨建で輸入取引をする場合、輸入者側に為替リスクが発生しますが、直近3年間でドル円レートは4割前後円安が進行しており(24年7月本稿執筆時点)、エネルギーや原材料の輸入コストが上昇し、各種値上げの背景となっています。
外為変動リスクの対策はいくつかありますが、その一つに「為替調整特約」を取引先と結ぶという選択肢があります。これは外国為替の変動は、企業努力の範囲を超えた事象であるため、外貨建取引をすることにより、輸入の場合、買主に100%そのリスクを負わすことは適当ではないとの考えによります。具体的には注文確定時点の直近為替レート(又は平均レート)を用いて、当該注文に対する外貨建単価を都度調整するというものです。
【運用方法例/売主買主間での事前の基本特約合意が必要】
・当該製品の取引基本合意時の外貨単価を「基準価格」とする
・取引基本合意時の為替レートを「基準レート」とする
・基準レートを中心にして上下一定幅を持たせた「固定バンド」を設定する
・当該製品の個別注文確定時の実勢為替レートが固定バンド内の場合、基準価格で契約する
・注文確定時の実勢為替レートが固定バンドを外れた場合、「固定バンドの端(エッジ)と実勢為
替レートの差を求め、レート変動割合x1/2=折半割合(%)を求める
・上記折半割合(%)を基準価格に適用して契約価格(為替変動による価格調整)とする
予め計算式を合意し、注文毎に繰り返すことにより、注文時の為替動向が出荷時の取引価格に都度反映されるため、外貨建取引であってもそのリスクを売主買主双方でシェア(x1/2折半)することができます。更に為替先物予約を組み合わせるのも一案です。
注意点としては、取引先との事前交渉/合意が必要なこと、外為変動のインパクト(差益/差損)を両者で折半し減少させようとするものでありリスク自体が0になる訳ではないこと、当該製品に(売主国通貨以外のコスト要因となる)外国産原材料等が含まれる場合その割合を計算に反映させなければならない可能性があること等です。
取引量や注文頻度などビジネスの実態に即して特約の効果を事前検証する必要があり、具体的な検討に当たっては専門家に相談することをお勧めします。
(回答日:2024年8月30日)