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取引先から「納品する製品のライフサイクルでのCO2排出量を教えてほしい」との要請を受けることがあります。どのように対応すればいいのでしょうか。
LCAの手法を用いて算出しましょう。
製品のライフサイクルでの環境負荷を定量化する手法に、LCA(ライフサイクルアセスメント)があります。LCAとは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取→原料生産→部品生産→完成品生→流通→消→廃棄・リサイクル)または、その特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法です。そのため、完成品を製造している取引先は、部品加工を行っているサプライヤーへ納入部品の環境負荷の算出を求めることになります。脱炭素社会への移行が求められる現在においては、環境負荷の一つであるCO2排出量の算出が求められます。
LCAの手法についてはISO規格(ISO14040〜ISO14043)にその内容が定められています。
LCA手法を用いた製品のライフサイクルでのCO2排出量の算出は、以下の手順で進めます。
【ステップ1】目的及び調査範囲の設定
LCAはすべてのライフサイクルで環境負荷を測定することですが、全てを細かく測定していたのでは非常に工数も時間もかかります。したがって、目的を絞って、その目的に合致する範囲を決めて実施することが重要になります。
【ステップ2】インベントリー分析
対象とする製品に関して投入される資源・エネルギーと、生産または排出される製品・排出物のデータを収集し、環境負荷項目に関する入出力明細表を作成するステップです。製品ライフサイクルのフローに基づき、データを収集します。そして収集したデータに原単位(例:ある原料1kgあたりCO2排出量、電力1kWhあたりCO2排出量など)を掛けてCO2排出量を計算し、機能単位(例:製品1個あたり)に換算します。原単位のデータベースとしては、産業技術総合研究所が開発した「IDEA V3」シリーズが有名です。
【ステップ3】影響評価
環境に影響を及ぼす各項目(例:CO2、CH4、NOxなど)が、どの環境問題(例:地球温暖化、大気汚染など)に対して、どのような影響を及ぼすかを定量的に評価するステップです。例えば、CH4の温室効果はCO2の28倍ですから、28倍してCO2換算値を計算し、地球温暖化への影響を評価します。
【ステップ4】解釈
結果を分析・評価し、目的に即して結論を導き出し、限界を説明して提言するステップです。報告書にまとめ、レビューを受けることになります。レビューには、内部専門家レビュー、外部専門家レビュー、利害関係者によるレビューがあります。
(回答日:2024年9月3日)