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現在、消費税の免税事業者ですが、免税事業者のままではインボイスは発行できないと聞きました。課税事業者となってインボイスを発行する申請をすべきか、検討のポイントを教えてください。
今後のビジネスの方向性によって検討し、増える負担額を把握しましょう。
1)インボイス制度が免税事業者に与える影響
現行制度では、免税事業者が発行する請求書や領収書であっても、支払った事業者は、一緒に支払った消費税を、納める消費税から差し引くことができます。
インボイス制度が始まると、原則として、インボイスとして認められる請求書や領収書(以下、インボイス)に記載された消費税額しか差し引けなくなります。
モノやサービスに対してお金を支払っても、インボイスがない支払いについては、請求書や領収書があっても、帳簿に一定事項を記載しても、消費税分を差し引けない、ということになります。
顧客が消費税を納める事業者である場合、自社はインボイスを発行できないと、顧客は自社に支払った消費税を差し引くことができず、顧客にコストアップを強いることとなってしまいます。
インボイスを発行しないと、顧客に迷惑がかかるかもしれない、もしくは、取引を見直されるかもしれません。
インボイスを発行できるのは、課税事業者となった事業者のみとなりますので、免税事業者の方がインボイスを発行するには、消費税を納める課税事業者になることを選択しなければなりません。
2年前の売上高が1,000万円未満であっても、申請をすることで課税事業者になることが可能です。
2)影響が大きいケース・小さいケース
顧客が消費税を納付する事業者が多い場合は、インボイスを発行できない場合の影響は大きいものと思われます。
顧客にとっては、自社に支払う消費税が納付する消費税から差し引けなくなるため、約1割のコストアップとなりますし、取引の価格交渉、継続をするかどうかの検討がなされる可能性があります。
一方で、顧客に一般消費者が多く、顧客がインボイスの発行を必要としていない事業の場合は、インボイスを発行しなくても影響が小さいと考えられます。
誰を顧客としていくのか、自社の今後のビジネスの方向性を見極めて、インボイスを発行できるようにすべきかどうかの判断が必要となります。
3)インボイスを発行することとした場合の負担について
インボイスを発行する選択をした場合には、消費税の納税負担を負うこととなります。
納付する消費税は、顧客から預かった消費税から、支払先に支払った消費税(インボイスが発行されたものに限る)を差し引いて計算します。
したがって、支払った消費税を集計するために、支払先から受け取ったインボイスなどの請求書類の保存や帳簿への入力が必要となります。
また、消費税を納付することによる負担額についてもシミュレーションしておく必要があるでしょう。
2年前の売上高が5,000万円未満の事業者については、事務負担の軽減措置があります。売上の一定割合(業種により4割〜9割)を支払った消費税として簡易的に計算する「簡易課税制度」という制度です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm
年に1回消費税の申告と納付が必要となりますので、申告の実務について税理士の協力を得られるようにするなどの準備が必要です。
この制度を使うかどうかも含め、自社にはどのくらいの資金的な影響があるのか、税の専門家である税理士に相談するなどして具体的に把握しておくとよいでしょう。