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人手が不足しているのに「扶養の範囲で働きたい」とパートから勤務日数や時間短縮を求められました。どのように対応したらよいでしょうか。
「扶養の範囲で働く以上に多くのメリットが得られる」ことを説明することが大切です。
多くの業種で人手不足がいわれる中、労働者から労働時間の削減を希望してくる場合があります。労働者本人の健康状態や育児や介護など、家庭の事情によりご希望が出てくる場合も多いのですが、ここ数年は次の2つの理由により労働時間の短縮を求めてくることが多くなりました。
1) 最低賃金の引き上げ
2) 社会保険の適用拡大
いずれの場合も、配偶者等の扶養の範囲で働いている方で、いわゆる130万円の壁や106万円の壁と呼ばれる要件に該当して、労働時間の短縮を求めることになっています。
なので、扶養から外れて労働者自身で社会保険に加入することで、「扶養の範囲で働く以上に多くのメリットが得られる」ことを説明することが大切です。
メリットとしては次の2つが主なものになります。
1.老齢厚生年金の額が増額していく
厚生年金保険に加入すると、加入した期間と納付した保険料の額に応じて、老齢厚生年金が算定されます。なので、加入により受け取ることとなる老齢厚生年金の額が増えていきます。実際に増加する額については、個人ごとに異なるので年金事務所や社会保険労務士事務所などで確認します。
さらに65歳以上(70歳未満)の方が厚生年金保険に加入した場合、既に、老齢厚生年金を受給していても、その後の加入実績に応じて毎年一回10月に年金額が改定(増額)されます。
2.病気やけが,出産などに対する保険
(1)障害厚生年金・障害手当金
厚生年金保険加入中に業務外の事由で病気やけがをして働けなくなったり、働くのに制限がかかってしまうことがあります。このような場合、障害等級1・2級に該当すれば障害基礎年金に加えて、障害厚生年金が上乗せされる形で支給されます。また障害等級3級に該当する場合には国民年金の障害基礎年金は支給されませんが、障害厚生年金は支給されます。障害厚生年金は、加入期間が短くても最低額の保障があり、一定の給付が確保されます。
3級よりも軽い一定の障害の場合、障害基礎年金などの支給は受けられませんが、厚生年金保険に加入すると、障害手当金(一時金)の支給を受けられることがあります。
(2)健康保険の傷病手当金・出産手当金
また、健康保険に加入していると、業務外の事由で病気やけがをして働くことができないときには、一定の要件を満たせば傷病手当金を申請することができます。働くことができなくなった日から起算して4日目から最長1年6か月分について働くことができない期間、休業した日1日当たり、給与の日給相当額の3分の2の額が支給されます。
同様に、健康保険に加入していると、被保険者が出産のために休業して報酬が受けられないときに、産前6週間、産後8週間について、出産手当金が支給されます。こちらも休業した日1日当たり、給与の日給相当額の3分の2の額が支給されます。
こういったメリットをもとに、労働者に対して社会保険の加入について丁寧に理解を求めていきましょう。