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できれば、税金は払いたくないので、つい経費を使ってしまうのですが、結果的にお金が残っていないことに気づきました。お金を減らさずに節税することは可能でしょうか。
キャッシュアウト(資金流出)を伴わない節税策を検討しましょう。
節税策には、2種類あります。お金を減らす節税策と、お金を減らさない節税策です。
1.法人税額の計算のしくみ
まず、法人税額は、以下のように計算されます。
・法人税額 =課税所得金額 × 法人税率
・課税所得金額 = 当期純利益+財務会計と税務会計の考え方の差異調整
(具体的には、損金不算入額+益金参入額-損金参入額-益金不算入額)
・当期純利益 = 収益 - 費用
上記のとおり、課税所得金額と当期純利益の金額には、差異がありますが、説明をシンプルにするため、ここでは、その差異は問題にしないものとします。
そうすると、当期純利益の金額が小さくなれば、法人税額が小さくなることがわかります。
2.お金を減らす節税策とは
お金を減らす節税策とは、当期純利益の金額を小さくするために、お金を使ってしまう節税です。
たとえば、保険への加入です。保険金の分だけ、利益を小さくできますが、支払った保険金の分だけ、手元に残るお金は減ることになります。
あるいは、商品や材料を多めに仕入れることも手元のお金を減らします。しかも、商品や材料を多めに仕入れても、会計上、この仕入金額は費用にはなりません。在庫金額として、貸借対照表に計上されるだけです。節税効果はありません。
設備導入も同じです。節税のために慌てて、設備を導入しても、10万円以上の価格の場合、買ったときにすべて費用にすることはできないという会計ルールがあります。有形固定資産として貸借対照表に計上されるだけです。(例外規定あり)
商品や材料や設備を慌てて買っても、手元のお金が減るだけで、節税にはならないので注意しましょう。
3.お金を減らさない節税策とは
では、お金を減らさずに節税するにはどうすればいいのでしょうか。お金を減らさずに、費用にすることができれば、お金を減らさない節税ができます。
たとえば、含み損のある土地などの売却です。
土地などの資産を売却したときに、購入価格よりも値下がりしていて、購入価格よりも低い金額でしか売れなかったとします。
この場合、会計的に損をしたと見なされます。
売却損 = 購入価格 - 売却価格
この売却損は、費用として利益を小さくしますが、手元のお金が減ることにはつながりません。逆に、売却代金分だけお金が増える効果があります。
また、売却できない場合は捨てることで、除却損を計上することも可能です。(適正な手続きが必要になります)
あるいは、回収の見込みがない売掛金を貸倒損失に計上するなども、お金を減らさずに費用を大きくする効果があります。(同様に適正な手続きが必要です)
貸借対照表の左側の項目(資産の部)のうち、収益に貢献していない項目については、売却や除却などによって、お金を減らさずに費用を増やし、節税することが可能ということです。
他には、制度的に税額控除や、特別償却が認められている場合があります。これらは、お金を減らさない節税策ですので、積極的に活用しましょう。