今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
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当社は従業員20名の製造業者です。経営難で従業員の賃金を引き下げたところ、ある従業員から「労働組合に入りました。今後は組合を通して交渉をお願いします。」と申し出がありました。当社はどのように対応すれば良いでしょうか。
弁護士等の専門家にサポートを依頼すべきです。
1.誠実に交渉する必要があります
労組の結成・加入は労働者の憲法上の権利です。労組を無視したり、労組からの脱退を求めたり、労組加入を理由に不利益な扱いをすると、不当労働行為(違法行為)となり、様々なトラブルが発生します。企業としては、誠実に団体交渉を行う必要があります。
もっとも、労組の要求を受諾する義務まで生じるわけではありません。当然、企業側の言い分もありますので、弁護士等の支援を受けて適切に対応すべきでしょう。
2.団体交渉の進め方
最初は、労組から結成通知書と要求書(賃金引下げ撤回要求のほか、様々な要求を記載した書面)が提示されるケースが多いです。また、交渉が進むにつれて、更なる要求(賃金引上げや一時金の請求、残業代や有給休暇の問題、組合事務所や郵便受けの設置要求など、企業実態に合わせた様々な要求)がなされることが多いです。
最も重要なポイントは、労組の要求が法律的に対応しなければならない事項なのか、事実上の要望に過ぎないのかを正確に把握することです。
企業としても、労働基準法等に基づき対応しなければならない事項については、適切に対応する必要があります。一方で、事実上の要望に過ぎない場合は、複数回の団体交渉を経て、労組との間で妥協点を探ることになるでしょう。
この点について、ご自身で対応された結果、法律的には応じる必要がない事項まで受諾されているケースが散見されます。また、交渉の進め方に失敗して、団体交渉が想像以上に長期化しているケースもあります。
団体交渉を経て一度合意すると撤回は極めて難しいので、交渉当初から弁護士等の専門家にサポートを依頼すべきでしょう。
3.他の従業員への波及
労組が結成されると、加入していない他の従業員も交渉経過に注目しています。組合員が増えると、交渉事項が増え、団体交渉も長期化します。適切な職場環境が必要なことは言うまでもありませんが、企業にとって過剰な負担とならないよう、慎重に対応する必要があるでしょう。