今までいただいたご質問の中で多かった質問とその回答例です。
詳細画面から専門家に、メール相談や直接会っての面談などを申し込むことができます。
スタートアップ企業です。3年後のIPOを目指して、事業計画の策定、予算管理等に取り組んでいるのですが、最近労務分野の上場審査も厳しくなっていると聞きました。どのような観点で優先順位を決め、準備を始めたらよいでしょうか?
自社に合致した仕組みを構築するのに時間がかかる事項から始める
IPO労務分野でも労務コンプライアンスの遵守を含めた多岐にわたる事項が審査対象となります。優先順位を決め、取り組みを進めていく必要がありますが、どこから手をつけていくべきか悩ましいところがあります。
労務コンプライアンス分野に限定して優先的に取り組むべき事項を挙げるとすると、経営成績にも影響を与え、自社に合致した仕組みを構築するのに時間がかかる事項から準備を始めることが考えられます。
① 労働時間管理について
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017.1.20)に基づき、労働時間管理の仕組みを構築します。具体的には、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録した上で実態の労働時間との乖離をチェックする仕組みを構築します。
みなし労働時間制、変形労働時間制などを取り入れている場合は、法令の要件に合致した運用を行っているかの確認や、もし要件に合致していない場合や不適切な運用が行われている場合は、当該労働時間制度の適用や管理の見直しが必要になります。
② 労働基準法における管理監督者について
労働基準法における「管理監督者」は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者とされており、「管理監督者」に該当するかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様などの実態によって判断します。一般的に社内で呼ばれている管理職と「管理監督者」の範囲は異なる場合が多く、注意が必要です。
③ 未払賃金の精算
未払賃金の精算は、過去において労働時間管理が不適切だったことにより、労働時間計算の誤りや、給与計算における計算式に誤りがあることで未払いの賃金が生じた場合に行います。未払賃金の精算は、在籍者に限らず退職者まで含めて行う必要があります。そのため、未払賃金を算出するための実態調査、未払賃金を確定するための計算、従業員との合意、未払賃金額の支払いなどの手続きが必要となります。