近年、世界的に扱われる問題であり、2019年大阪市で開催されたG20サミットにおいても議題とされた海洋プラスチック問題。プラスチック廃棄物が海に漂流し、雨や波、その他自然環境によって小さなプラスチック(マイクロプラスチック)に刻まれ、それを海洋生物が食べてしまい、食物連鎖を通じてあらゆる生物に取り込まれていることが判明しています。
石油からつくられるプラスチックは本来自然界には存在しない物質で、自然に分解される性質を持たないため、マイクロプラスチックとなって人にも食事を通じて取り込まれています。
人体への影響はまだ明らかにはなっておりませんが元々食用ではない化合物が取り込まれるのが良い影響をもたらすとは考えにくいため、問題解決が提唱されています。
過去、1889年に指摘された地球温暖化現象においても現実味を帯び、注目を浴びるまでに80年ほどの時間を要した歴史から考えても「人体への影響が明らかになっていない」ことを理由に楽観視するべきではない問題と言えるでしょう。大阪産業創造館では「ものづくり」の観点からセミナーやイベントを開催するなど、この問題に関する情報提供を行っています。
身近なものでペットボトルやストロー、卵のパックや密閉容器など飲食に関わる分野、食器洗い洗剤の容器やスポンジ、洗濯バサミなど家庭用品の分野、テレビやリモコン、時計の一部パーツなど家電製品の分野、そして衣料品やビニール袋、包装材。軽く強度があり、それでいて空気をほとんど通さない性質を持つため家庭に登場するシーンだけでもかなり多くの製品に利用されています。
それだけ多く使われるプラスチックですが、そのプラスチックが海へと流れる経過はあまり知られていません。海岸で廃棄されたごみだけが原因ではなく、街で捨てられたごみが雨や風で流れ、水路から川へ流れ、海に到達します。
Reduce(減らす)、Reuse(再利用)、Recycle(再生)の3つの言葉がありますが個人で取り組めることではReduce(プラスチックを使う量を減らす)が現実的です。
プラスチック自体を生活から無くすことは不可能かと思いますが、なるべくビニール袋を受け取らずエコバッグを使ったり、ゴミは持ち帰るなど個々の努力によって海に流れるプラスチックを減らしていくことができます。
プラスチック製品の生産量はこの50年で20倍以上増えたと言われており、廃棄に関して常に議論されています。中でも「使い捨てプラスチック製品」においては国を上げて対策に乗り出すところも少なくなく、次のような施策をとられています。 出典:環境省プラスチックを取り巻く国内外の状況<参考資料集>
[有料化・課税] | [製造・販売・使用などの禁止] |
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韓国、ベトナム、インドネシア、イスラエル/ボツワナ、チュニジア、ジンバブエ/フィジー/コロンビア/ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、マルタ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、キプロス | バングラデシュ、ブータン、中国、インド、モンゴル、スリランカ、イスラエル、ベニン、ブルキナファソ、カメルーン、カーボベルデ、コートジボワール、東アフリカ、エリトリア、エチオピア、ザンビア、ギニアビサウ、ケニア、マラウイ、モーリタニア、モーリシャス、モロッコ、モザンビーク、ニジェール、ルワンダ、セネガル、ソマリア、南アフリカ、チュニジア、ウガンダ、ジンバブエ、マリ、タンザニア、パプアニューギニア、バヌアツ、マーシャル諸島、パラオ、アンティグア・バーブーダ、コロンビア、ハイチ、パナマ、ベリーズ、イタリア、フランス |
[国・地域] | [施策内容] |
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フランス | ・2016年8月30日に政令を公布し、2020年1月1日以降、使い捨てのプラスチック容器について原則使用禁止とする。 ・対象製品は、主な構成要素がプラスチックで、使い捨ての想定されているタンブラー、コップ及び皿。例外は家庭用コンポストで堆肥化できる生物由来の素材を50%使用するプラスチック容器で、2025年までにはこの割合を60%に引き上げる。 ・対象者は、プラスチック製の使い捨てタンブラー、コップ及び皿を、自身の経済活動での必要性により、有償あるいは無償で流通・使用、あるいは国内市場に初めて投入する個人または法人。 |
イタリア | ・2018年6月、欧州委員会に対して、2020年1月1日より、マイクロプラスチックを含有する、洗い流せる化粧品の製造及びマーケティングを禁止する計画を通知。規制対象は、不水溶性の5㎜以下のプラスチックを含有した製品。 ・同規制は、2019年1月1日より、非生分解性で堆肥化できない綿棒を禁止する内容も含む。製造業者は、綿棒の正しい廃棄方法を包装に明記しなければならない。 ・いずれの規制も、罰金は、2,500~25,000ユーロ。もし、含有製品の数量が多大である場合、または、それらの価格が違反業者の総売上20%を超える場合は、罰金が大幅に増大する可能性がある。 ・イタリアの群島トレーミティ島で、2018年5月1日より、食事用のプラ製皿・カップ・フォーク等全てが禁止された。食事でプラ製品を使用した場合、50~500ユーロの罰金が課せられる。 ・ローマ東部に存在するアブルッツォ州は、首都のゴミ危機を緩和するため、ローマから最大39000トンのゴミを受け入れることに同意した。 |
イギリス | ・2018年3月、デポジット制度の導入を検討。 ・2018年4月18日、プラスチックストロー、マドラー及び綿棒の販売を禁止する意向を発表。施行にあたっては、産業界と連携して代替製品の開発や法制化への適用に必要な時間を確保する予定。 ・政府は、使い捨てのビニール袋の料金5pを、中小企業も含めた全ての小売業者に拡大することを検討。また、最低料金を少なくとも10pに引き上げる計画を発表。 |
ニューヨーク市 | ・市議会が、バー、レストラン、喫茶店でプラスチックストローとマドラーを使用禁止にする法案を提案。(シングルユースの買物袋の使用、公園でのペットボトルの販売は既に禁止されている) ・例外は障害者と医療用。既に60以上のレストランがストローの使用をやめている。 |
台湾 | ・2018年12月、2019年から食品・飲料業界でいくつかの段階に分けて使い捨てのプラスチック飲料用ストロー、プラスチックバッグ、使い捨て容器・器具を禁止する予定であることを発表。 ▼ストロー ・2019年から、ファーストフードチェーンなどで店内でのプラスチック製使い捨てストローの提供を禁止 ・2020年以降、無料のプラスチック製ストローがすべての飲食店で使用禁止 ・2025年、持ち帰り用のプラスチック製ストローはお金を支払わなければならない ・2030年、完全に使用禁止 ▼プラスチックバッグや使い捨て容器・器具 ・2020年、無料のプラスチック製ショッピングバッグ・使い捨て容器・使い捨て器具などを小売店で提供することが禁止 ・2025年には使用するのに追加で手数料を支払うことが義務づけられる ・2030年、完全に使用禁止 |
サウジアラビア | ・サウジアラビア標準化公団(SASO)は2017年7月9日、プラスチックに関する新たな規制を発表。 同年12月12日より運用開始。 ・厚さ250ミクロン以下のポリエチレンまたはポリプロピレン(主に容器包装に用いられる)を使用した、 使い捨てプラスチック製品の製造・輸入を禁止。 ・プラスチック製品における政府承認の酸化型生分解性材料の使用を義務付け。 ・2019年9月、それぞれ9品目、7品目を対象とした第二段階、第三段階の規制を運用開始予定。 |
日本においてはレジ袋有料化の措置が2020年7月1日より開始され、益々プラスチック製品のリサイクルを推進していくことが進められています。
大阪では、環境問題解決に向けたプラスチック成型品の研究開発が行われています。その取組みについて、大阪産業創造館でも取材しています。
自然に分解されないプラスチックではなく、最終的に自然に還るプラスチック
「分解されず、長期間の保全が可能」といったプラスチックのメリットが自然環境への問題になっている今、「軽くて丈夫で自然に還る」特性を持つ生分解性プラスチックに注目が集まっています。
大阪府東大阪市に本社を構え、60年以上の社歴を持つ株式会社クニムネではトウモロコシ由来の生分解性プラスチックに特化して製造しています。
右から通常の巣箱、巣板のみ生分解樹脂を使用、巣板・枠ともに生分解樹脂を使用。
生分解性樹脂を原材料に使った豆皿。
植物由来のプラスチックはあまり普及しておらず、その耐熱性や耐久性はおろか存在もあまり知られていませんが、同社の製品は研究を重ね、100℃にも耐える素材を開発し、特許を取得しています。
産創館の取材記事はこちら燃やしてもダイオキシンが発生せず、CO2の排出量を大幅に削減できるプラスチック
プラスチックごみは地域によって「可燃ごみ」や「資源ごみ」に分けられます。
この違いはプラスチックを燃やすと発生する有毒な汚染物質であるダイオキシンが関わっており、ダイオキシンを分解するには800℃以上の高温で焼却する必要があります。さらに焼却時に発生したガスの温度が200℃まで下がる過程でダイオキシンが生成されます。
このことから、有害物質を極力生成せずにプラスチックを燃やすには800℃以上の高温を保って焼却し、200℃以下へ急冷できる設備が必要となり、これらの設備を備えている自治体が「可燃ごみ」として収集しています。
このことからプラスチックを環境にやさしく焼却処分するためのハードルはかなり高いものではあるのですが、焼却してもダイオキシンを発生しないプラスチック素材を開発している会社があります。
大阪市中央区に本社を置く株式会社アースクリエイトでは樹脂に炭酸カルシウムを50%以上混練した樹脂成型品を製造販売しています。
炭酸カルシウムは、ごみ焼却の現場でダイオキシンを抑える中和剤としても使用されており、一緒に焼却されるほかの製品の有毒ガス削減にも役立ちます。
環境面のメリットとコスト面のメリットを両立した製品は容器包装資材分野に幅広く利用されることが期待されています。
環境に優しい手提げ袋やボトルなど、企業からのオーダーを受けて開発・商品化を図っている。
大阪産業創造館ではこうした技術革新を積極的に発信し、
SDGs達成に向けて協力してまいります。
国連広報によるとプラスチックごみの9割がリサイクルされておらず、毎年800万トン以上のプラスチックごみが海へと流れて出ているということです。
SDGsのターゲットのひとつとして「2025年までに海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」が掲げられています。
私たち中小企業の支援機関としては
といった多角的な取組みを行う中小企業へ情報交換の場や支援の機会を増やし、このターゲットの達成に協力してまいります。
2030年までの国際目標として国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)。
2022年10月開催の「SDGs対応技術展2022」は、17の開発目標の内、ものづくりと関係性の深い目標項目に絞った展示商談会です。SDGsに関わる新たな事業の創出や他社とのコラボレーションによる新たな製品の開発、上記開発項目に関わる新たな商材等をお探しの方は、ぜひご覧ください。
経営相談室には約130名の専門家が登録しており、相談者にはその中から適任と思う人を選んで相談していただきます。
SDGsに関連する省エネ、ISO・エコアクションや事業運営全般のご相談ができる専門家だけでなく、幅広い分野の専門家が在籍していますので、新規事業やマーケティングなど、課題に応じてご活用ください。
今後、成長が期待される市場をテーマ別に分け、新しい事業展開やコラボレーションのキッカケをつかんでいただく交流会を不定期で開催しています。
対象となる商材・サービスを持つ企業や、今後その分野に参入を検討している企業などが集まり、情報やノウハウなどの交換を行うことで、幅広いネットワークの構築や新たな事業展開などを目的に開催しています。
大阪産業創造館で開催する商談会・展示会は、技術やマーケットなど、さまざまなテーマを設定して開催しています。
新たな技術やこれから注目を集めるマーケットに関する特長的な企業との出会いの場となりますので、是非、ご活用ください。
他にも中小企業に役立つビジネスセミナーを開催中!
イベントカレンダーの詳細はこちら※SDGsとは
2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標を言い、17の目標と169のターゲットから構成る。近年、社会問題に取り組む企業がクローズアップされる機会も多く、CSRの一環として取り組む企業も多い。
大阪産業創造館は大阪市経済戦略局の中小・ベンチャー企業支援拠点として2001年1月に開業しました。
大阪市経済戦略局より委託を請けて「公益財団法人 大阪産業局」が運営しており、経営相談をはじめ、セミナーやビジネススクール、商談会、交流会など、多種多様なサービスで中小企業をサポートします。我々は各機関と連携して、経営問題を解決するワンストップサービスをめざしています。
大阪産業創造館ができること