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創業までに必要なこと、しておきたいことを一般的なステップに沿って解説する「創業への道!」。12のステップで、コレを読めば「起業がわかる!?」内容をお伝えします。
※内容は2017年3月現在のものとなります。
第1回目の今回は「起業について考える」をテーマにお伝えします。
そもそも起業ってどういう意味でしょうか?
広辞苑で調べてみました。「起業とは、新しい事業を起こすこと」だそうです。
それでは事業とはどういう意味でしょうか?
またまた、広辞苑で調べますと「事業とは、(1)社会的な大きな仕事、(2)一定の目的と計画に基づいて経営する経済的活動」のことだそうです。
つまり、起業とは「社会的な大きな仕事、一定の目的と計画の基づいて経営する経済的活動を起こすこと」になります。
あなたが考える事業は、社会的な意義があって一定の目的がありますか?
起業においては、まずこの点をじっくり考える必要がありますね。
起業すること自体は簡単です。個人で事業をするのであれば税務署等に「開業届」なるものを提出すれば、事業者としてスタートすることができます。
しかし、事業を継続させ、成長・拡大させていくことは、本当に大変なことです。しかも開業時に借金をしたとしたら、早くてその翌月から返済がスタート!もう待ったなしの状態です。
起業は、自分の裁量で仕事ができる反面、すべて自分で責任を取っていかなければなりません。
このことをよ~く理解しておかないと、起業してから「こんなはずじゃなかった」って後悔することになります。
起業をお考えのみなさんは、ぜひこのことを肝に銘じ、どういう想いや志を持って起業するのか、じっくり考えてみてください。
『創業への道』の第2回目は、「起業すべきか悩む」をテーマにお伝えします。
みなさんの中には、”起業したい”とか”起業しようかな”と考えている方がおられると思います。
経営相談室(あきない・えーど)では日々起業のご相談を受けていますが、起業する理由は本当に様々です。
などなど
確かに、起業することで自分のやりたいことが実現できたり、人生を謳歌できるかも知れません。しかし、それは事業がうまくいったらの話ですよね。(ちょっと厳しい言い方かも知れませんが・・・)
実際、事業が軌道に乗るまではそういう実感もわかないでしょうし、逆に今と比べて犠牲になるもの(※)が多く「こんなはずじゃなかった」と思うことも多々あります。
だから、起業を考えるときは、これらを犠牲にしてでも絶対に起業したいのか自問自答し、覚悟を決める必要があります。そして覚悟を決めたら、自らを見極める作業、「自己の棚卸し」を行いましょう。
「自己の棚卸し」とは、自分自身の過去を振り返り、自分の得意分野や培ったノウハウ、技術をどう伸ばすのか、苦手とする部分をどう補っていくのかを客観的に分析することですが、具体的には、以下の4つの切り口で棚卸しします。
次の3つは、起業者に必要な要素(素質)です。これらを自分が兼ね備えているかチェックしてみてください。できればお知り合いに評価してもらってもいいかも知れません。
もしこれらのうちひとつでも欠けていると思ったら、現時点での起業は考え直したほうが良いと思います。
今まで携わってきた仕事や趣味の内容を分析します。
仕事や趣味の内容を時系列に整理し、どの時期に何をしていたのか、そして自分は何をしているときに充実感を感じ楽しいと思ったのか、逆にどのような失敗をして上司に怒られたのか、自分自身の不得意分野は何なのか、などを思い出してみてください。
これら作業を通じて自分の強みと弱みを把握します。強み弱みを把握することで、強みを起業にどう活かし、弱みはどのようにカバーしたらよいのか考えることができます。
現在、自分がどういう人脈を持っているか把握します。
このときの注意点は「自分が現在の地位や肩書きがない状態になっても役立つ人脈かどうか」ということです。
人脈って案外、地位や肩書きに寄り付いていることが多いことを認識し、自分が無名になっても活かすことができるか整理してください。
起業するにはそれなりの資金が必要です。事業に必要な資金は業種によって様々ですが、売上が立つまでに商品の仕入れや広告宣伝、アルバイトの給料など、先行して資金が必要となります。
起業者向けの融資制度もありますので、金融機関からお金を借りることは可能ですが、自己資金が融資の条件に影響してきます。
だから、もし現時点でお金がないのであれば、早急にお金を積み立てていくようにしましょう。
「起業について悩むこと」って本当に大事です。まずはとことん悩んでみてください。必ずよい答えが見えてくると思いますよ。
もし悩みすぎて困ったら、経営相談室(あきない・えーど)にいつでも相談に来てください。参考となるヒントをお教えしますので。
『創業への道』の第3回目は、「ビジネスアイデアを創出する」をテーマにお伝えします。
いきなり質問ですが、みなさんは「立志庵」という名前を聞いたことがありますか?
ご存知ではない方が多ければ、私どものPR不足ですが (;>_<;)
「立志庵」とは、サンソウカンが半年以内に起業を予定しておられる方を対象に、起業準備のためのプログラムに加え、場所をお貸しするサービスのことです。(正式名は、起業プログラム&デスク「立志庵」といいます。)
利用者の募集は年4回しており、面接による審査も行っています。
面接ではいつも「起業の動機や目的」「事業の内容」「過去のご経験」などを30分程度じっくり時間をかけてお伺いするのですが、お話を通じてその方のやりたいことが明確になっているか、やりたいことがその方の考えや想いと合致しているか、などを確認させていただきます。
事業を成功に導ける人は、「自分の想い」と「やりたいこと」が一致しています。だから、どんな苦境に陥っても、逆境に立たされても事業を継続することができるのです。
「初志貫徹」これを行動で示せる人が必ず成功すると信じています。
ビジネスアイデアを創出するにあたって、まず自分自身がそもそも何をしたいのかという原点を明確にする必要があります。
この原点とは、自分自身が事業を行ううえでの本来的な事業目的(例えば「自分の夢を実現する」「社会に恩返しする」など)のことで、一般的に「理念」ともいいます。この「理念」がはっきりしていないと、起業準備はスタートできません。
そして、その「理念」を実現するためにどんな事業をするかを考えます。それが「ビジネスアイデアの創出」です。
ビジネスアイデアの創出方法としては、自分自身が大事にしている価値観や将来実現したい夢など、「個人的観点に基づいて事業を考える方法」と、人口動態や世間の価値観の変化、規制緩和など、「社会的観点によって発生するビジネスチャンスをもとに、今までにない新たな事業を考える方法」、この2つのアプローチがあります。
例えば、
など、こんな単純ではないですが、自分の趣味や嗜好などを切り口にビジネスアイデアを創造します。
ビジネスとは顧客の「不」を解消することだ、とよく言われます。
例えば、
など、身の回りに「不」を解消しているビジネスが結構あると思います。
まずは、自分が不便・不満・不安に思っていることを洗い出してみましょう。そこからビジネスアイデアがきっと生まれると思います。
以下の4つのキーワード(P・E・S・T)をもとに考えます。
国の方針や法規制によって、ビジネスチャンスにつながることもあれば、脅威になることもあります。
例えば、規制緩和されることによって新規参入が可能となり新たなビジネスチャンスが得られる一方で、競合が増えることによって、競争が一層激しくなることにもつながります。
政治的な要因が創業を考えているビジネスにとって追い風となるのか、向かい風になるのかを見極める必要があります。
事業を行う上で経済がどのように動いているかは切り離すことができないテーマです。
株価や金利はもちろんのこと、グローバル化により為替の変動も大きな影響を与えますので、常にアンテナを張っておくことが必要です。
また、消費者向けビジネスの場合は消費動向、事業者向けビジネスの場合は設備投資動向、製品及び商品提供に必要な原材料の需給動向なども注視しておくことが求められます。
以上の観点から「ビジネスアイデア」を創出していきましょう。
そしてそのビジネスアイデアについて、お客様が対価(お金)を支払ってくれるほど魅力的なものであり、競合には負けない何か(差別化された要素)を持っているかどうか、検証してみましょう。
できれば、思いついたアイデアを、家族や友達に話してみてください。いろいろアドバイスがもらえると思いますよ。
『創業への道』の第4回目は、「様々な業種・業界を知る」をテーマにお伝えします。
創業をお考えの方は、自分のやりたいこと(事業)が決まっているでしょうか?決まっているのであれば、次はその業界のことを深く知りましょう。
など、知りたいことがたくさん出てくると思います。
そこで今回は、以下の3つの視点について調査する方法をお教えします。そこで今回は、以下の3つの視点について調査する方法をお教えします。
まず、業界全体を押さえます。具体的には以下の3つについてです。
これらを調べるにあたって、以下の書籍などが参考になります。
ただし、これらの書籍は高価ですので、図書館などで必要なところだけをコピーするといいと思います。(尚、業種別審査事典は経営相談室で閲覧可能です)
※実は、図書館にはビジネスに役立つ情報がたくさんあります。インターネットで蔵書を検索することもできますので、ぜひ活用してみてください。
これ以外に、業界に関する各種情報を提供しているサイトがあります。
商売をやるには、お客様のことと同業他社(競合)のことを知らないといけません。
次の4つについて情報を整理します。
Product(商品) | 何を売っているのか? |
---|---|
Price(価格) | いくらで売っているのか? |
Place(販売方法) | どこで売っているのか?どのように売っているのか? |
Promotion(販売促進) | どのように商品を知ってもらっているのか? |
これらは、ホームページや雑誌(業界紙等)などから知ることができます。また、自分が同業他社の顧客になって、お店に行ったり商品を購入したりお店の人と話したりすることで、さらに詳しい情報が得られます。
最近は、他の業界から新規に参入する企業が増えてきています。また業界そのものが消えてなくなったり、他の業界と融合したりすることもおかしくない時代になりました。
例えば、写真フィルム業界。一昔前、カメラといえば「フィルムカメラ」でした。それが今では「デジタルカメラ」が主流に・・・。
その結果、フィルムが売れなくなり、メーカーは事業転換をせざるを得なくなってしまいました。
富士フィルムさんの場合、培ってきた製造技術を活用して、メディカル分野や化粧品分野に活路を見出し、これらの分野で売上を伸ばしています。
ちなみに、いつも年末年始に見るテレビCM「お正月を写そう♪」も、最近はスキンケア化粧品やサプリメントなど幅広い商品をアピールするようになりましたよね。
他の業界の動きを知ることによって、自分の事業に対する守りと攻めのヒントを得ることができます。
などを考えるきっかけができます。
他の業界について知るには、雑誌やテレビなどが有効です(もちろんインターネットも有効ですが)。
雑誌では「日経ビジネス」や「日経トップリーダー」「週間ダイヤモンド」「週間東洋経済」などがオススメです。1冊数百円で購入できますし、特集の記事に応じて購入するのもいいと思います。
テレビ番組では、ニュースの特集や「カンブリア宮殿」「ガイアの夜明け」「がっちりマンデー」「ルソンの壺」などの番組は参考になると思います。
情報はいろいろなところに転がっています。ただそれを何げなく見過ごすのか、それとも意識して情報を汲み取り、ビジネスに活かすのか、結果は大きく異なります。
今回お伝えしたことを参考に、ぜひ行動に移していってください。
『創業への道』の第5回目は、「ビジネスモデルを構築する」をテーマにお伝えします。
みなさんは「ビジネスモデル」という言葉を聞いたことがあると思いますが、その意味をご存知でしょうか?
ビジネスモデルとは「誰にどんな商品・サービスを提供し、いかにして収益を上げていくかといった『儲けの仕組み』のこと」だといわれています。
ビジネスモデルを構築するにあたって、以下の2つのことをあらかじめ行い「新たに事業を行う価値がある」と推測できたことが前提となります。
※これらは、第3回と第4回でお伝えしましたので、そちらを参考にしてください。
一般的に、ビジネスモデルには以下の要素が高いほど、事業がうまくいくといわれています。
(実際「ビジネスプランコンテスト」などでは、以下を評価指標として審査していることが多いようです。)
要素 | 理由 |
---|---|
市場性があること | 成長力に富む事業である |
収益性があること | 儲けが十分出る事業である |
競争力があること | ライバル企業に打ち勝つ差別化されたものがある |
実現可能性があること | 自分が持つ資源やネットワークと照らし合わせて、事業を成り立たせることができる |
これらを考慮しながら、ビジネスモデルを検討する必要がありますが、ステップとしては以下のようになります。
どのような企業でも、その企業が経営活動を行うための領域というものがあり、その領域内でライバル企業と戦っています。
企業において事業領域を決めることは、その企業の方向性を示すもので、経営の基本戦略にもなります。
創業者も、これから始めようとするビジネスが何なのか、明確に誰でもわかる言葉で決める必要があります。
自分の活動領域が決まったら、次はその領域で勝負する商品・サービスのコンセプトを決めます。具体的には、以下の3つを柱に考えます。
創業者が自分のビジネスの内容を具体的な形でまとめる場合、まず最初に手をつけるのが、これからやろうとする事業の商品・サービスを購入してくれる人、つまり「ターゲット顧客」を明確にすることです。
一般的にターゲットというと「20~30代の女性」のように漠然と考えてしまうことが多いですが、これだけでは不十分です。
なぜなら、ターゲットの対象範囲が広ければ広いほど宣伝活動にかけるコストや労力がかかり、お金もネットワークも乏しい創業者にとっては不利になる(経営資源が豊富なライバル企業に負けてしまう)ことが多いからです。
基本は「狭く、小さく」で、最初にお客様になる人を明確にし、それから顧客を広げていくようにします。
たとえば「本町駅徒歩10分にある1Kのマンションに住む25歳の独身女性会社員」のようにターゲットをグッと絞り込んでみてください。そうすると、その人の行動や価値観などがある程度イメージできるようになりますし、ときには自分の周りにターゲットと同じ属性(タイプ)の人が存在し、商売のヒントをもらうことができるかも知れません。
創業者は、自分が提供する商品・サービスについて、それを利用する顧客に対しどのような価値・機能を提供しようとしているのか、また顧客はなぜ対価を払ってまでそれを手に入れたいと思うのか、といったことに対して無頓着な方が多いものです。しかしビジネスで大切なのは、まさにこの点です。
いくら優秀な製品やサービスを開発しても、顧客に対してわかりやすい形で、たとえば品質面や価格面などで、具体的に「こういうメリットがある」ということを明確にできなければ、訴求力の乏しいものになってしまいます。
これを考えるには、提供する商品・サービスを購入する顧客のそれを利用する背景(何に悩んで、何を求めているのかなど)や利用シーンを想定してみるといいと思います。
ちょっと難しいかも知れませんが、自分がターゲット顧客になったつもりで感情移入して考えてみましょう。
提供する商品・サービスをどのような方法でターゲット顧客に提供するかを考えます。
これは販売戦略に含まれるもので、直接販売するのか、代理店経由で販売するのか、インターネットで販売するのかなど、その方法は対象となる商品・サービスの性質によって変わってきます。
基本的には自らが直接販売するのが理想です。なぜなら自らが販売の先頭に立って顧客の生の声をつかむことができ、それを製品開発や営業活動に活かすことができるからです。
しかし、対象となるマーケットの規模が大きかったり、営業エリアが広範囲にわたる場合は、創業者自らの力で展開するには限界があります。むしろ提携先を見つけて任せたほうが良い結果が得られるかも知れません。
なお、提供方法は同業他社のやり方を参考にしてみるといいと思います。
事業性は以下について検討し、ビジネスとして成り立つか検証します。
提供する商品・サービスは、ターゲット顧客が本当に欲しがっているものなのかを確かめます。売れるという思い込みでビジネスをはじめると必ず失敗します。
他社にはない技術を使って作った製品であっても、顧客が欲しがっているものでないと売れません。まずは、ターゲット顧客のニーズと商品・サービスがマッチしているかを客観的に検証する必要があります。
検証方法としては、アンケート調査が有効です。アンケートといっても堅苦しくやるのではなく、まずは知り合いからターゲットと同じ属性(タイプ)の人をピックアップし、彼らから意見を求めるといいと思います。
ターゲット顧客の数を推定する必要があります。推定するには顧客の年代や性別、居住地などを切り口に調べることができますが、行政等が発行する統計調査書を参考にすればいいと思います。また、その数が今後増えるのか減るのかも推定しておいたほうがいいと思います。
市場規模が小さければ、事業として成り立つ可能性は低いですので、仮説でもいいので必ず推定してみましょう。
商品・サービスがいくらたくさん売れても、利益を上げることができなければ事業として成り立っているとはいえません。
自らの生計を立てるためにも、従業員の生活を守るためにも、そして地域経済を発展させるためにも、利益をしっかり確保し、税金を納めることが、営利事業者の責務であると、私は思います。
では、利益を上げるためにはどうすればよいでしょうか? ポイントは、グロスマージン(粗利益)をしっかり確保できるかです。
グロスマージンとは、売上から仕入や製造にかかった費用を差し引いた利益のことで、これを一定額以上確保しないと、その他にかかる経費(人件費や販売促進費、家賃など)を賄うことができず、経営は火の車となってしまいます。
この点は、京セラ創業者の稲盛和夫氏も同じことをおっしゃっています。「事業を始めるにあたっての条件として、グロスマージンがしっかり確保できること、そして市場が伸びる見込みがあることだ」と。
一般的に、業種によって必要とするグロスマージンが決まっており、これを確保できる事業かをシミュレーションします。 (たとえば、小売業:30%、卸売業:15%、飲食店:70%、製造業:50% といわれています。)
なお、売上高の組み立て方ですが、売上は客数と客単価の掛け算(売上高=客単価×客数)で構成されることをヒントにします。
客単価は、同業他社の価格設定や、ターゲットの懐事情を考慮した上で決め、客数は市場規模とライバル企業の市場占有率(取引シェア)を勘案して推定します。
以上を踏まえ、独自の「儲けの仕組み」を検討しましょう。
あとはライバル企業の動きを調査し、他社よりも優れているところ、ターゲット顧客にアピールできるところは何かを考えてみてください。
『創業への道』第6回目の今回は、「事業計画書に落とし込む」をテーマに、事業を始めるにあたっての計画書の作り方についてお伝えします。
ところで、事業計画書って何のために作るのでしょうか?
など考えられると思いますが、その目的は「事業計画書を見る人(見せる相手)」によって異なります。
創業者本人にとっては、事業を始めるにあたってのシナリオとなります。「いつまでに」「なにを」「どのように」するのかを明確にし、それに基づいて行動します。その結果、目標(売上や利益など)を達成することができますし、計画通りにいかない場合は、計画を修正します。
なお、事業計画書は必ず書面に落とし込むべきです。頭の中だけの計画だと、きちんと物事が整理できていなかったり、やるべきことを忘れてしまったりすることがあるからです。
事業において、自分ひとりで出来ることって限られていると思います。事業を円滑に運営していくためにも、協力者の存在は欠かせませんよね。
協力者を得るには、自分のやる事業のことを相手に知ってもらい「協力したい」と思わせ、具体的に何をしてもらうのかを示す必要があります。
そこで、事業計画書は協力者の説得材料として活用します。思いつきではなくきちんと計画立ったものを見せることで、創業者の本気度を伝えましょう。
金融機関からお金を借りたり、ベンチャーキャピタルから投資を受けるには、事業計画書が必要不可欠です。きちんとした計画があって継続的に事業を行い、売上・利益を出していくからこそ、きちんとお金を返すことができると認められるのです。
また、通常は関係者全員にプレゼンすることはできず、資料だけで融資・投資の可否が決められることも多いので、そういう意味でも、事業計画書をよいものにしておく必要があります。
お客様は商品やサービスを購入する前に、それを提供する会社について調べたりします。最近はインターネットで簡単に会社を検索することができますので、ホームページに事業計画書の一部を載せて「自分の会社は信頼できる会社だ」ということをアピールすることも大切になってきました。
一般的に、事業計画書は以下のように構成されています。
※産創館のサイト「経営お道具箱」に事業計画書の雛形を掲載していますので、参考にしてみてください。
(https://www.sansokan.jp/akinai/odougu/)
事業計画を要約したものです。単なる要約ではなく計画のポイントや事業の特徴と優位性(強み)をうまくアピールするようにします。
自分がこの事業に人生を賭ける動機や理念、人生で大切にしているものは何か、なぜその事業が必要とされると考えたのか、などを記載します。
商品・サービスの内容について、どこに新規性や独自性があるのかという点を中心にその特徴を記載します。
ターゲットとする市場についての全体像を表し、事業の魅力や可能性を明らかにします。
ターゲットとする市場には、どのようなニーズを持った顧客層がいるのか明らかにします。そして自社の商品・サービスによって、顧客のニーズをどのように満たすことができるのかを整理します。
競合先を調べその商品・サービスの強みや弱みを明らかにし、自社の優位性を明らかにします。さらに競合対策があればそれを記載します。
計画書作成時点での不確定要素や問題点がどこにあるのかを把握し、その対応策を考えて記載します。
商品・サービスごとの販売ターゲットを明確にします。
売れる仕組みとしての販路構造、販売ルートの妥当性、可能性を明らかにします。
商品・サービスの価格設定、各販売ルートでの価格設定について記載します。
顧客ニーズや競争相手と比較して、価格が妥当であることを示します。
(潜在)顧客に対して、どのような方法で認知してもらい、購買を喚起するかを明らかにします。
直接販売か、それとも代理店等経由なのかなどをはっきりさせ、販売の実現可能性を記載します。
販売計画をもとに、いつどの程度の仕入・生産が必要になるのかを明らかにし計画を作ります。
従業員やパートなどを雇う場合の人員計画と人件費の計画を立てます。また、採用したい人の要件や採用時期等も考えておきます。
事業開始時に必要な資金とその調達方法を記載します。
必要資金 | 設備資金(敷金・保証金・内装工事代)、必要器具、事業開始時の経費(初回仕入れ代、広告宣伝費)、事業開始後の運転資金(3か月程度) |
---|---|
調達方法 | 金融機関からの借入、親戚・友人からの借入、自己資金、その他などに分けます。 |
向こう3年間の損益計画を作ります。「利益がどれくらい出るのか」「事業として成り立ち発展していくのか」について、数値面からその実現性を表します。
ここでは、損益計画ではわからない現金の出入りを予想します。
「勘定合って銭足らず」という言葉があるように、利益が出ていても手元にお金がないと事業はストップしてしまいますので、資金が不足することなく円滑に事業を運営していくことができるか、もし不足するときがあるのであれば、いつ金融機関からお金を借りたらいいのか把握します。
また、事業計画を作成するにあたって、以下に留意しましょう。
自分で作った計画書は、どうしても主観的で独りよがりなものになりがちです。もし、自分ひとりしか見ない計画書なのであれば、それで良いかも知れませんが、他の人を説得する材料として使うのであれば、客観的なものでないと納得されないと思います。
できれば、信頼できる人に事業計画書を積極的に見せ、意見をもらいましょう。そうすることで、内容がブラッシュアップされ、よりよい計画書を作ることができると思います。
事業計画書を作るとき、損益計画などについて、最初から自信を持って書ける人は少ないと思います。 最初に立てる計画には、根拠のない数値を書いてしまって、実際に経営を行っていくうえで、実際とは大きく違うために参考にできないことが大半でしょう。
そこでオススメしているのが、3種類の計画を立てることです。 この3種類とは、「現実的な計画」「楽観的な計画」「悲観的な計画」の3つを指します。
「現実的な計画」は、この通りにいくだろうと予想する計画です。計画が1種類しかないという場合には、この数値を上回ったらうまくいっている、下回ったらうまくいっていないということしかわかりません。 そこで「楽観的な計画」と「悲観的な計画」の2種類を追加します。
「楽観的な計画」は、これを上回ったらもっと野心的な事業計画にしていくように計画を立て直すというポイントです。この計画を立てるときには、とてもワクワクします。感覚的には、背伸びをしてもギリギリ届かない、もう少し上にあるような目標が適しています。
「悲観的な計画」は、これを下回ったら事業を見直す、あるいはいったん事業をやめるという基準です。
創業で難しいのは、「やめどき」です。資金がなくなったらやめる、あるいは借金を返せなくなってからやめるのでは遅いと思います。
再起できる「やめどき」をあらかじめ決めていれば、いったん他の仕事に就いたとしても、また準備ができたときにもう一度チャレンジできると思います。
以上を参考に、一度「事業計画書」を作ってみましょう。
もし分からないことがあったら、経営相談室(あきない・えーど)に専門家がいますので、相談してみるといいでしょう(もちろん無料です)。
『創業への道』第7回目のテーマは、「退職について、勤務先と交渉する」です。会社勤めの方は必読のお話です。
「起業する」と決めたのであれば、どこかのタイミングで会社に申し出(退職届)をしなければなりません。しかしその前に必ず確認おかなければならないものがあります。それは『就業規則』です。
『就業規則』とは、会社と労働者との間で決められた規則のことで、労働時間や賃金等の基本的な労働条件や職場の服務規律などが記載されています。
この規則の中で、特に確認しておきたいのは「競業避止義務」や「秘密保持義務」です。
競業避止義務とは、自社の役員や従業員が、自社とライバル関係にある会社へ転職したり、ライバル関係となる事業を起こすことを禁止するものです。
最近は、雇用の流動化もあって、退職社員による機密やノウハウ漏洩を防ぐために、競業避止義務を課す会社が多くなってきました。また、ライバル会社に就職することを理由に、退職金を減額するというような措置を講ずるといった悪質な会社もあるそうです。
しかし、われわれ国民には憲法で「職業選択の自由」が保障されています。だからこの「競業避止義務」は無効だと主張できるのではないかと思ってしまいます。
たしかに、われわれには「職業選択の自由」が保障されており、一般的に「競業避止義務」を負う必要はありません。しかし、もし裁判になった場合は、退職者の行為が、以前勤めていた会社に対して、明らかな背信行為に該当するかどうかなどが判断のポイントになるそうです。
例えば、大量に顧客や同僚を引き抜き、以前いた会社の業績が明らかに悪化したり、在職中に関わった関わった企業秘密の内容や程度が高度で、しかもその秘密に携わっていた期間が長かった、などのケースは競業避止の対象となります。
また、競業避止義務の内容としては、以下の要件が満たされていないと有効ではないそうです。 【注意】これは過去の判例から言われていることですので今後の判例によっては内容が異なる可能性も出てきます。あくまでも参考程度にしておいてください。
なお、会社の役員は、当然会社の機密を知りえる立場ですので、「取締役の競業避止義務」が法律で課せられているので要注意です。
秘密保持義務とは、役員や従業員が在職中に知った企業秘密を他に漏らしてはならないという義務のことで、在職中だけでなく退職後もその義務が課せるのが一般的です。この義務は、就業規則に記載されるだけでなく、入社時や退職時に誓約書として、別途書面にサインさせられたりすることもあります。
秘密保持義務の内容としては、「営業秘密の内容や範囲、その価値が従業員の退職前の地位に照らして合理的な内容であること」が条件となります。だから、就業規則等の秘密保持義務が、これらを満たしているかどうかを確認し、合理性を欠くのであれば、会社に対してこれらを満たすよう要請したほうがいいと思います。
なお、法律において営業秘密の不正使用や不正な開示を禁止したり、不正手段で取得した営業秘密の利用や開示を禁止する条文があります(不正競争防止法)ので、基本的には、企業秘密とみなされるものは持ち出さないようにしましょう。
具体的には、顧客情報やノウハウ等企業秘密が記載された資料(媒体物含む)、情報が記録されたノート、仕事上で取引先の人からもらった名刺などが該当します。
次に退職の申し出ですが、まず直属の上司に時間をとってもらい、自分の言葉で伝えましょう。ここで心掛けることは以下の2点です。
有能な人ほど、会社に残って欲しいものです。また上司は部下が辞めるとなると「自分が悪かったのか」など変に悩むこともあります。
もちろん、会社や上司が気に入らないから辞めるということもありますが、そのような理由を直接言っても、何の得にもなりません。
だから、上司に対しては、自分の夢と起業に対する想いを伝え、会社を退職することに対して理解してもらうようにしましょう。そしてできれば、起業後も応援してもらえるような関係ができたら言うことなしです。
基本的に会社は少数精鋭の人員で運営しているものです。だから、おおげさかも知れませんが、従業員が一人いなくなっただけでも業務運営に支障を来たすことがあります。
よって、後任への引き継ぎ期間はしっかりとることを念頭に上司と話し合ってください。
「立つ鳥、後を濁さず」のことわざがあるように、去り際はきれいに円満であるに越したことはありません。そうでない場合、変な噂が広まったり、嫉妬ややっかみにより起業の足を引っ張る人が現れたりします。そのようなことがないよう細心の注意を払ってください。
最後に、起業すると決めると、現在の会社に未練を感じなくなり、早く会社を飛び出して、起業したいと思いがちです。
しかし、退職を伝えるのは早めにするとしても、起業までの準備期間をとっておいたほうがよいでしょう。なぜなら、会社でしか学べないことがあるからです。
例えば、普通に会社で仕事をしているときはあまり気にしない、総務や経理などの処理方法とルール、人事管理や目標管理の方法などです。これらは、会社にいるうちは普通に知ることができても、辞めてしまうと知ることができない情報です。
将来、事業を大きくしたときに備えて勉強しておきましょう。全く同じ管理はできなくても、参考になる点はたくさんあるはずです。
『創業への道』の第8回目は、「起業について、家族の理解を得る」をテーマにお伝えします。
私ども経営相談室(あきない・えーど)のコンサルタントは、数多くの起業家とお出会いする機会があります。
一般的に、起業家が起業後に悩むこととして、以下のようなことをよく聞きます。
起業家はホント大変です。
営業から仕入、販売まですべてを自分ひとりでやらなければなりませんし、経理などの事務処理までも自分でやらなければなりません。
会社員時代は、部下や事務の人に任せていたことが任せられず、苛立たしく思うことも多いようです。
また、収入についても、会社員のときは毎月決まった給料がもらえ、ご家族も安心して暮らしていけたと思いますが、起業後は、売上をつくることができなければ、収入もありませんので、最悪のケース、生活に困るということもあります。
もし、ご家族が起業に対して協力的でなかったら、
「ほら!言ったとおりや。もう商売なんかやめて、どこかで働いて!」とか、
「自分の好きなことばかりやってたから、ばちが当ったんや!」とか、
「私や子どもの将来はどうしてくれるの!」とか非難ごうごうで「泣きっ面に蜂」状態となります。
「お父さん、大変な時期だけど頑張って!もし私に出来ることがあったら何でも手伝うから。」
「事務処理は任せて。お父さんは、営業に行ってくれたらいいし。」
「私がパートに出るから、生活費のことは気にしなくていいわよ。」
なんて言われたいものですよね。このような協力が得られるためにも、起業する前の早い段階に、家族や親族を説得するよう心掛けましょう。
具体的にどのようなことをしたらよいでしょうか?ポイントは以下のとおりです。
自分の夢や人生観、起業に対する想いをしっかり理解してもらいましょう。
『創業への道』第1回でもふれましたが、起業のメリットやデメリットについて具体的に説明します。特にデメリットについてはよく理解してもらい、それでも起業したいのだということを納得してもらいましょう。
どのような人生を過ごすのか(例えば、住むところ、生活水準、趣味、娯楽、資産形成、子どもの教育などについて)をご家族で語り合ってください。そしてその夢の実現が、ご自身の事業計画と関連している、方向性が一致していることを確認してください。
自分一人でできることって限りがあります。従業員を雇えない起業当初は、家族の方に実務的なところをお願いするかも知れません。そこで予め、どのようなことを手伝ってもらうのかを説明しておくと、家族も準備がしやすいと思います。
家族の理解なくして起業は成功しないと思います。「面倒くさい」と思わず、必ずやってくださいね。
『創業への道』の第9回目は、「会社を退職する」をテーマにお伝えします。
起業したい事業の内容が固まり、家族からの理解も得ることができたら、本格的な起業準備に入ります。
しかしこの段階になると、会社勤めと両立を図るのが時間的にも精神的にも難しくなってきますので「早く会社を退職しよう」と思うようになります。
会社を退職するには、会社の指定された日までに「退職願」を提出する必要がありますが、多くの会社は30日前に出すように定めているみたいです。
(ちなみに民法では、期間の定めのない雇用契約を締結している従業員は、2週間前までに退職の意思を表示すれば良いそうです。)
「退職願」の書き方は以下のとおりです。
「退職願」は必ず、直属の上司に手渡します。決して上司の机の上に放置したり同僚にあずけるなどしてはいけません。
次に、業務引き継ぎについてです。会社を辞めることが決まったからと言って中途半端な状態で退職しないようにしてください。
退職までに後任が決まるかどうかわかりませんが、誰に引き継いだらよいか上司に決めてもらい、その人に業務を引き継ぎます。
引き継ぎをスムーズにする秘訣は「業務の文章化」です。仕事内容やその手順、書類やデータの保管場所、注意事項などが書かれた「引継書」を作りましょう。
また、今まで溜めこんだ不要な書類は捨ててしまうことと、パソコン内のフォルダやファイルで自分しか分からないものは整理するようにします。
※パソコンのデータを個人のフォルダごとに管理している場合は、結構厄介です。担当者がいなくなったらそのフォルダはほったらかしになることが多いです。
退職直前になったら社内外の関係者やお世話になった方々へ退職の挨拶をします。
訪問して挨拶する場合は、できる限り後任を連れて行き、引き続きご贔屓いただくようお願いするべきですし、もし訪問できないのであれば、ハガキやメールなどで挨拶状を出し、退職後にトラブルが起きないよう万全を期します。
退職当日は少し早めに会社へ行き、身の回りの掃除や持ち物の整理を行います。そして返却するものをきちんと返し、受け取るものは必ず受け取ります。
円満に退社したら以下の3つの手続きを忘れずに行いましょう。
治療や入院などの医療費をすべて自分で負担したくないですよね。だから健康保険には必ず加入しましょう。加入方法は3つあります。
退職後2年間に限り、勤めていた会社の健康保険に入ることができます。
加入手続きは、会社退職日の翌日から20日以内に住所地の社会保険事務所等へ「任意継続被保険者資格取得届」と必要書類を提出します。
保険料は、今まで支払っていた金額の約2倍になると思います。(詳細は各健康保険組合へお問い合わせください。)
退職後14日以内に手続きをします。「国民健康保険被保険者資格取得届」や健康保険の資格喪失届(写し)などを住所地管轄の市区町村の国民健康保険窓口に提出します。
保険料は、前年の所得によって決まりますが、各市区町村により算出方法が異なりますので、住所地を管轄する市区町村へお問い合わせください。
配偶者の会社で手続きをしてもらいます。自分の年間収入が130万円未満であれば扶養になれますが、失業保険を受ける方は扶養に入ることができません。
保険料は、配偶者の保険料から賄われますので、自ら払う必要はありません。
最近、加入者が減ってきているようですが、将来のことも考え必ず入りましょう。
収入がない場合には保険料を免除してもらえる制度がありますので、最寄の市・区役所等で手続きをしてください。
前の勤務先から「離職票」をもらったら、住居を管轄するハローワークに行き、「求職の申込み」と「離職票」を提出します。
その後の失業の認定や求職活動などの際にもハローワークに足を運ぶことになります。 雇用保険の基本手当の給付日数は、離職理由や年齢、被保険者であった期間などによって決まります。
※給付日数があっても、ハローワークの担当者が「起業した」と判断したら、失業給付の支給は受けられませんので注意しましょう!
『創業への道』の第10回目は「事業計画書を完成させる」をテーマにお伝えします。
第6回目で「事業計画書の作り方」についてお伝えしましたが、今回はお金を借りることを目的とした、しかも金融機関の方が「う~ん、なるほど!」と納得するような計画書に仕上げるためのポイントをお伝えしたいと思います。
以前にもお伝えしましたが、事業計画書は、一般的に以下のように構成されています。
この中で、金融機関が細かくチェックする項目を3つあげるとすれば、どれだと思いますか?
答えは、「3、事業の内容」、「7、資金計画」「8、損益計画」この3つです。もちろんその他の項目も見られますが、融資の審査をするにあたって金融機関は何よりも
を真っ先に知ろうとします。だから金融機関は事業計画書を、事業内容(創業の動機)⇒ 資金計画 ⇒ 損益計画 ⇒ その他の項目、といった順に読むことが多いのです。
これに対し、創業者はどうしても「創業の動機」や「事業の内容」などを一生懸命説明しようと思いがちです。 自分のはじめる事業が「社会的に意義があって、ニーズがある」とか「競合がなく、絶対ビジネスとして成り立つ」といったことを知ってもらおうとしますよね。
しかし金融機関は冷ややかに見ています。「それで、どんだけ売上や利益が出せるの?」って。
創業者と金融機関とのギャップ、これを事業計画書でしっかり埋めなければなりません。 そのためには、各数値計画の数字の部分に細かくなること、そしてその数字の根拠をしっかり説明できるだけの材料を取り揃えておくことが肝要です。
一般的に、金融機関は以下の順で数字を見ていきます。
これらすべてについて、金融機関が「問題なし」と判断したら、融資はほぼOKです。
逆に、これらのうち1つでも「疑わしい」とか「よく分からない」と思うところがあれば、融資はNGとなります。
創業時にお金を借りようと思っておられる方は、これらを参考に金融機関を唸らせる事業計画書を作ってくださいね。
もし分からないことがありましたら、経営相談室(あきない・えーど)に専門家がいますので、ぜひご活用ください。(もちろん無料です!)
『創業への道』の第11回目は、「資金調達をする」をテーマに、創業者向け融資制度の概要と手続きの流れ、そして融資を申し込むにあたっての留意点についてお伝えしたいと思います。
大阪府内で創業される方は、一般的に以下の2つの融資制度を利用されることが多いです。
日本政策金融公庫 国民生活事業(昔の「国民生活金融公庫」)が融資を行う制度です。
無担保・無保証人を希望される場合、3,000万円(うち、運転資金1,500万円以内)を上限として融資を申し込むことができます。
※「無担保・無保証人」とは、所有する不動産などを金融機関に担保として差し出したり、お金を借りる方以外の第三者が保証人になることを望まない場合をいいます。
返済期間は適用した制度によりますが、(元金)の返済を据え置くことができます。
例えば、5年(60回)返済で半年据え置く場合、お金を借りてから最初の6回は金利だけ支払い、残り54回で金利と元金を返済するといった感じです。
融資利率融資期間によって異なり、融資実行日現在の利率が適用されます。
その他の要件については、こちらのサイト(http://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html)をご確認ください。
http://www.jfc.go.jp/n/finance/flow/tetsudukij_c.html
最寄りの支店に必要書類を提出します。必要書類は、所定の借入申込書・創業計画書などです。
融資の申し込みをされた方(以下「申込人」)が公庫の支店に行くか、公庫の担当者が申込人の事務所を訪ねるかの方法で面談が行われます。面談時には「お金の使い道」や「事業の概要」「事業計画の状況」「資産・負債の状況」等についてヒアリングされます。また場合によっては、追加資料を求められることがあります。
提出された資料およびヒアリング内容をもとに審査が行われます。前回にもお伝えしましたが、審査では以下について調査されます。
融資が決定したら、融資契約に必要な書類が送られますので、それに署名・捺印するとともにその他必要書類(印鑑証明書など)と合わせて公庫に提出します。
書類に不備がなければ、数日後には申込人が指定する金融機関の口座へお金が振り込まれます。
大阪信用保証協会が融資を保証し、民間の金融機関が融資を行う制度です。
府内において、事業開始に関する具体的な計画を有し、新たに事業を営むために必要な準備を現に行っておられる方に対し、2,500万円を上限として融資を申し込むことができます。
融資期間は7年以内で、そのうち12か月間は元金の返済を据え置くことができます。
融資利率及び保証料率は申し込む制度によって異なり、実際は融資実行日の利率が適用されます。
※融資利率は金融機関に支払う利息を計算する利率、保証料率は保証協会に対して支払う保証料を計算する利率のことです。
詳細については件については、下記のサイトをご確認ください。
http://www.cgc-osaka.jp/guarantee-system/case/case01.php
所定の書類をご準備いただき、金融機関へ融資および保証の申込をしていただきます。
金融機関は、融資が適当であると判断した場合、信用保証委託申込書等の必要書類を信用保証協会へ提出します。
信用保証協会は、保証に係る審査を行います。
担当者がお客様を訪問するなどして直接お話をお聞かせいただく場合もございます。
審査の結果、信用保証協会が保証承諾を行う場合、金融機関に信用保証書を送付します。
金融機関は、信用保証書に基づいて融資を行います。
この際、お客様からは金融機関を通して信用保証料をお支払いただきます。
利用する融資制度によっては、自己資金要件が求められます。
自己資金とは、「創業以前から計画的にお金を貯めていた」という形跡を、預金通帳の明細などをもとに過去から遡ってチェックすることができる資金をいいます。
もし、融資を申し込む直前に親族や友人などからお金を融通してもらって、それを「自己資金です」と言ったとしても、それは自己資金として認められませんし、タンス預金のように誰のお金かを客観的に証明することが難しい資金も対象となりません。
融資が必要なことが想定される場合は、予め自分名義の口座に貯めておくなど、創業されるご本人が貯めてきたことが証明できるよう準備をしておきましょう。
なお、融資を受けるまでの期間は、申し込みをしてからおよそ1か月半程度です。
先ほどもお伝えしましたが、融資を受けるまでに最短でも1か月は時間を要します。しかし、事業をスタートさせるには、店舗を改装したり設備を購入するなどにお金が必要になるのも事実です。
もし、お金を支払わなければならないというときになって「融資が下りない」となると、大変なことになります。そのような綱渡りなことは創業前からしたくはありませんよね。であれば、なるべく余裕をもって融資を申し込むようにしましょう。
融資の審査は、担当者だけでなくその上席の課長や支店長、場合によっては本部の審査部門の人も関わります。
しかし、申込人は審査に関わる人全員と会うことはできません。普通は、窓口となる担当者にしか事業内容や自分の想いを伝えることはできません。
もし、担当者が申込人のことをあまり理解していなかったら、上席に対して中途半端な説明しかできず、その結果「よく分からないものには融資しない」と上席が判断してしまうかも知れません。
そのようなことにならないようにするためには、
この2つをやりましょう。必ず良い結果につながると思います。
私どもに「創業者向け融資を申し込んだのですが断られました。どうしたらいいですか?」と相談に来られる方が時々おられます。
その際に、金融機関等へ提出した融資申込書類を拝見するのですが、「あ~、これでは金融機関はNOって言うだろうな」と思うような内容(事業計画)になっていることが多いです。もし、私どもに事前にご相談いただければ・・・、と悔やまれます。
このようなことにならないためにも、ぜひ公的な相談窓口を利用してください。金融機関の取引に精通している専門家もおりますので・・・。
『創業への道』もいよいよ今回で最後となりました。
起業を決心してから、ビジネスモデルの構築や事業計画書の作成、そして金融機関からお金を借りる方法までを、これまでお伝えして参りましたが、ラストの今回は「開業前の手続き」をテーマに、開業前に必ず押さえておかなけらばならない手続き等についてお伝えしたいと思います。
まず、事業形態についてです。みなさんは事業を始めるにあたり、法人・個人どちらの形態がよいか悩まれると思います。
しかし、それぞれにメリット・デメリットがありますので、まずそれを把握したうえで、自分が取り組む事業の性格や業種、事業規模などを考慮し判断しましょう。
事業形態によって、立ち上げ時の手間や費用、信用力、税金、事業に対する責任などが異なります。
たとえば信用力の場合、法人のほうが高く見られがちです。なぜなら、法人は立ち上げるときに資本金が必要となりますし、法務局で登記をすることで、逃げも隠れもしない存在であることが客観的に証明されるからです。
逆に、立ち上げ時の手間と費用は、個人のほうが有利です。法人は、設立するのに一定の手続きが必要(https://www.sansokan.jp/akinai/odougu/2_seturitu/kabushiki/)で、しかも約2週間ほど日数がかかります。費用面についても、資本金以外に、登録免許税や設立手続きの代行手数料などで40万円程度かかります。一方、個人の場合は、書類を提出する程度ですので、時間も費用もほとんどかかりません。
参考までに、法人・個人のメリット・デメリットは、産創館および中小機構(国の中小企業支援機関)のサイトに掲載してありますのでご覧ください。
起業する業種によっては、行政の許認可が必要になることがあります。許認可が必要かどうかは、国や都道府県などが一定の衛生水準や技術水準などを確保する観点から法令等で定めています。
たとえば飲食店の場合、保健所の許可(食品衛生法)が必要ですし、酒類販売業の場合は税務署の免許(酒税法)が必要です。
サンソウカンでは、こちらのサイト(https://www.sansokan.jp/akinai/odougu/2_seturitu/license/)に開業に必要な許認可の一覧をまとめていますので参考にしてください。そしてその手続き等については、行政の担当窓口へお問い合わせください。
その際には必ず以下を確認するようにしましょう。
起業に伴う届出は、税務関係と社会保険関係とがあります。また個人と法人では提出する書類や時期が異なりますので注意しましょう。詳しくはこちらのサイト (https://www.sansokan.jp/akinai/odougu/2_seturitu/syokikan/)をご覧ください。
など
健康保険、厚生年金保険の加入関係書類
(新規適用届、被保険者資格取得届、被扶養者(異動)届、国民年金第3号被保険者届)
※法人は強制加入で、個人は従業員5人以上の場合(一部の業種を除く)、強制加入です。
雇用保険関係書類(適用事業所設置届、被保険者資格取得届)
※個人、法人とも従業員を雇用すると「雇用保険適用事業所」となります。
※個人、法人とも従業員を雇用すると「労災保険適用事業所」となります。
※従業員を10人以上雇用する場合は、「就業規則届」の届出も必要です。
個人の場合は、国民健康保険や国民年金に加入しなければなりません。これについては第9回目「会社を退職する」でお伝えしていますので、そちらを参考にしてください。
『創業への道』いかがでしたでしょうか?
これまで12回にわたってお付き合いいただいた方、本当ありがとうございました。みなさまの起業にお役に立てればと思いお伝えして参りましたが、文章だけではなかなか伝えきれていないことがあったかも知れません。その点は何卒ご容赦ください。
われわれサンソウカンスタッフは、起業を目指す方、企業しておられる方のよきパートナーとしてこれからもやっていきます。もし起業や会社経営で悩むことがありましたら、いつでも気軽に産創館および経営相談室をご活用ください。
みなさまのこれからのご活躍、お祈り申し上げます。ありがとうございました!