産学官連携を目指す“出前”研究室
大阪市立大学大学院工学研究科は、産業界、社会との活発な交流を通して、大学における基礎研究のさらなる発展を期するとともに、有機的な「産」・「学」・「官」のパートナーシップを築き、萌芽的、挑戦的な応用研究の開拓によって、大阪市を中心とする地域に密着した新しい産業の創生と育成、都市大阪の再生に積極的な役割を果たすことをめざして、「都市・環境」、「新エネルギー」、「ナノ領域マテリアル・バイオ」、「IT活用」などの重点研究部門についての最新の研究成果、これまで培ってきた基礎研究の成果を、“出前”研究室という形で広く社会に発信します。
やりくり大阪その3
オオサカ縮メーコンパクトシティに向けてー
20世紀に膨張した都市は、土地不足、交通渋滞、公害など様々な病理に対し「つくる」工学技術で解決してきました。しかしそれらは、都市を人にとって魅力のない空間にし、エネルギーの大量消費、生態系から隔絶された水辺など、新たな都市の環境問題を生み出しました。
その反省を踏まえて取組むべき解決策は、環境負荷を抑制しつつ、既存の都市を産・官・学・民協働で賢く再生していく「やりくり」という“古くて新しい”21世紀型の着想が欠かせません。
非成長型社会の要請、地球環境問題への対応などを背景にコンパクトシティを構築する動きが浸透し始めています。それは、拡張された都市域を地理的・物理的に縮減するといったスケールの問題にとどまらず、むしろ近代化の過程で生じた様々な歪に着眼し、再編を図る契機として捉えることだと考えられます。
効率性・機能性を基調として「分離」の手法が展開されてきたモダニズムの思想から、人間性・関係性・自律性を重視する「混在」の都市デザインへのパラダイムの転換が期待されています。
都市のあり方そのものが大きな変革期を迎えている今日、コンパクトシティを視座に据えて,大阪の現状と課題を都市構造・土地利用・都心居住など、都市・建築の多様な切り口で読み解きながら、新たな都市像を描出します。
プログラム
13:30〜13:40
開会挨拶・本日のテーマについて 都市系専攻教授 横山 俊祐
13:40〜14:20
大阪の成熟度−大阪都市圏の将来像 都市系専攻助手 姥浦 道生
昨年は全国レベルで人口減少がスタートした年として非常に話題を呼びましたが、大阪都市圏ではまだ人口は増加傾向にあります。とはいうものの、その傾向は都市圏内で一様ではありません。そこでまず、大阪府における人口動態の特徴を明らかにします。その上で、コンパクトな都市の形成のために「縮メ」られる部分の候補として最初に挙げられる郊外部の土地利用の状況とその問題点を、泉北ニュータウンを事例として解説します。
14:20〜14:50
都心のやりくり−都市デザインの新たな方法 都市系専攻助教授 嘉名 光市
21世紀を迎え、国際的な都市間競争の激化や20世紀に整備された都市の更新・再生など、都市を巡る状況は大きく変化しようとしています。また、近年の都心回帰の流れに代表されるように都市を住まう、暮らす場所として再評価する動きも進んでいます。そこで、近年都心周辺で見られるようになった様々な変化をみていきながら、都心を「やりくり」していくための着眼点をあげます。
そして、国内外の都市における「やりくり」の試みを通じて、21世紀の大阪の都心が目指すべき「やりくり」の方向性を考えます。
14:50〜15:20
都心居住とライフスタイル 株式会社URサポート 谷口 康彦
戦後、都市に産業が集まると同時に、地方から人口をどんどん吸引し、住まいの郊外化がすすむと同時に、旧来からの都心の住まいも、産業に追いやられ人口は減少していきました。しかしその後、産業構造の変化などにより都心部の工業の転出などがすすみ、工場が新たな都心居住の場に変身し、さらにバブル崩壊以後、都心そのものが空洞化しそこに近年マンションが増加、都市に多様な生活の場が生まれてきています。
このような都心の住まいの変化と背景を報告し、今後予想される働く女性、団塊世代の大量リタイアなど新たな高齢者など、多様化する都市に暮らす人々の生活と都市の姿を考えます。
15:20〜15:35 休憩
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15:35〜16:55
パネルディスカッション「コンパクトシティに住まう」 司会 横山 俊祐
発表者に加え、関西圏を中心に住宅の設計を数多く手がけられてきた建築家、安原秀さん(ヘキサworks代表)を迎えて、「コンパクトシティに住まう」をテーマに新たな都市像を多面的に捉え議論します。
16:55〜17:00
閉会挨拶・次回テーマについて
産学官連携推進委員会委員長 橋本 敏
17:00〜18:30 交流懇親会(大阪産業創造館内)