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■ 最新の統計トピックス
     
  「平成17年国勢調査(速報)」に関して  
 
~急速に女性化する大阪市の意味するものは?~
 
平成18年 2月  22日
   昨年10月に実施された国勢調査の速報が発表された。人口増減に関しては、昨秋に記載した「人口移動要因調査」の結果と同様であり、市内中心部で人口増がみられ、南部・西部で人口減となっていることが確認できる。ここでは男女別に統計が得られる国勢調査の特徴を活かして、男女比率に着目して2つのポイントを紹介します。
 
  (1)とうとう全国平均を上回る女性型都市に変貌
              ~ 有史以来初めての快挙?! ~

 
   高齢化社会の到来はよく言われているが、それはとりもなおさず社会の女性化を意味することはあまり言われていない。そのメカニズムは単純であり、女性の方が寿命が7歳程長いためであり、全国的に女性の割合が高まっていることからも確認できる。  
    大阪市における女性比率(男性100人に対する女性人口)と全国の動向を対比すると画期的なことが起こっている。総務省の人口統計で最も古い明治5年以降について女性比率を図示すると、少なくとも110年以上にわたって大阪市は全国平均よりも下側にあったものが、急速に上昇し、平成17年に初めて全国平均よりも上側にシフトしていることがわかる。すなわち、かつては全国平均の男女比よりも男性の方が多い男性型都市であったものが、ついに全国平均よりも女性が多い女性型都市に変貌したのである。  
     
   
    図-1  全国と大阪市の女性比率の推移
 
   このことは何を意味するのであろうか。私は歴史学者ではないので確かなことは言えないが、「天下の台所」と言われた江戸時代には、大阪の豪商が活躍していたため、丁稚や船頭、荷捌きなどの男性労働需要が旺盛であり、地方からも男性の方が多く移住してきたであろうことは想像に難くない。明治時代も江戸時代の就業構造を引き継いで男性型都市であったことは上図が物語っている。  
   大阪市は、幾度かの戦争時においても男性型都市を維持してきたが、戦後になって1950年に初めて男性よりも女性が多い時期が一時的に到来したものの、依然として全国平均よりも4ポイントほど下回っている。その後、大都市への集団就職による高度成長が持続した1960年代にかけては、再び多くの男性労働者が地方から大阪に転入してきたため、男性が人口の過半数を占める時代となった。
 1960年には全国平均よりも8.5ポイント低かった女性比率は、それを極小点として上昇し続け、高度成長から安定成長への転換点である1970年に男女比がほぼ半々となり、その後1980年には全国平均とほぼ一致する水準にまで女性比率が高まっていったのである。
 
   それが反転するのが1990年のバブル期であり、一時的に下降したものの、バブル崩壊とともに再び上昇し始め、ついに2005年に全国平均を上回ることになり、女性型都市の時代に突入したのである。  
   戦前はともかく、戦後において2回、女性比率が下降した時期を振り返ると、1つは高度成長期、もう1つはバブル期であり、ともに大都市:大阪が雇用機会を豊富に提供し得ていた時期である。このことを裏返して言えば、90年以降で上昇カーブを描いていることは、大阪が雇用機会を提供できていないことを暗示しているようにも解釈できるが、果たしてどうであろうか。  
   今回の国勢調査の発表は速報であり、今後、就業状況などの集計結果が公表されるのを待って再度、分析する予定であるが、上記の現象の解釈としては、高齢化社会の到来による女性化をベースとしつつも、他方でサービス経済化により男女を問わない雇用機会が大都市:大阪に急速に増えたことに主要因があるように思われる。女性の社会進出が定着した証左ではなかろうか。  
  (2)女性の多い区で人口が増加する理由は?  
   「第5回大阪市人口移動調査」(2003年)によれば、大阪市における人口移動は市内での区間の移動も含めると、年間20.5万人に達しており、人口の7.8%が転出入していることになる。このような激しい転居の理由の詳細については、10月6日の『統計トピックス』を参照していただくとして、おおまかには、1)市外との転出入については「仕事のつごう」と「結婚」が主要因となっており、2)それらに次いで「住宅事情」や「生活環境」が重要な要因となっている、のである。  
   したがって、移動先の選定に際しては、住宅の広さや家賃水準といった居住面や通勤・通学、日常の買物等の生活利便性などを考慮したであろうと思われる。  
 
  図-2  人口増加率と女性比率の関係
   人口増減にはこうした諸要因が複雑に関わっていることを十分承知の上で、ここでは国勢調査結果を活用した分析として、市内24区別に人口増加率(00→05年)と女性比率の関連性を見てみることとした。
 05年の国勢調査に関しては、現在のところ速報の情報しか得られず、年齢別、就業状態別などのデータ入手は不可能なため、単純に人口増加率と女性比率の関係を図示した結果しか描けないが、これを見ても、「女性比率が高くなるにつれて人口増加率が多くなる」傾向がうかがえる。相関係数は0.31であり、統計的検定からも「『相関関係はない』とは言い切れない」ことが確認できる。
   図-3 人口増加率と生産年齢人口女性比率の関係     女性の割合が高いことと、人口の増加率が高いことの直接的な因果関係を考えてみても、直感的で説得的なものは思い当たらない。  
 次に年齢別のデータが得られる2000年国勢調査を用いて、生産年齢人口(15~64歳)の女性比率と高齢者の女性比率を用いて、人口増加率(00→05年)との関係を図示すると、上記と同様な傾向が確認できる。相関係数で比較すると、高齢者女性比率の方が0.42であり、生産年齢人口のものよりも0.1高くなっている。
   図-4 人口増加率と高齢者女性比率の関係    転入者が高齢者女性比率を調査して引っ越してくることはないわけであり、この相関性の強さもブラックボックスと言わざるを得ない。こうした統計的事実と人口増加要因を結びつけるとすれば、街の防犯性や利便性が確保されていることが、転入者が新居住地に求める要件であるのと同様に、高齢者の女性にとっても、1人暮らしも可能な望ましい生活環境的要件であることを示唆するものと言えよう。  
 
   また、市内の世帯数の4割が単身世帯(00年)である大阪市の大都市的な特徴を考慮すれば、(1)で推察したように、女性の就業機会が増加し、独身女性が住みやすい場所を求めて移動・転入することで生じる人口増加が、生産年齢人口における女性比率の上昇をもたらしていると考えられる。  
   いずれにせよ、確定的なことは現段階では言えないものの、おそらく"女性に気に入られる街づくりをすることが人口吸引力の要諦である"ことだけは言えるのではないだろうか。  
  文責:徳田 裕平(事務局長)  
     
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