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債務処理の方法として,特定調停手続について説明してください。
「特定調停手続」とは、経済的に破綻するおそれのある個人・法人の経済的再生のため、民事調停手続の特則として設けられた制度で、簡易裁判所において債権者との間での合意形成を図る手続です。
(1) 特定調停手続の概要
民事調停手続は、紛争当事者の申立に基づき、調停委員が間に入って両当事者の言い分を聞き、紛争の解決のための合意を形成することを内容とする手続です。
特定調停手続は、経済的に破綻するおそれのある個人・法人の申立に関して、特に定められた調停手続ですが、通常の調停と比較すると、
1. 裁判所が当事者に文書の提出を命ずることができ、これに正当な理由なく従わない当事者には10万円以下の過料の制裁を科すことができ、
2. 一定の場合には、裁判所は民事執行(差押)を停止することができ、
3. 当事者間に合意が形成されない場合でも、当事者双方から申立があれば、調停委員会が調停条項を定めることができる
等、債務者の経済的再生を早期に実現するための制度が設けられています。
特定調停における調停の実際は、上記の点をのぞけば、いわゆる任意整理とほぼ同じです。即ち、民事上の利息の上限について定めた利息制限法に規定された以上の利息を定める契約については、過去の弁済に遡って利息の引き直し計算を行う等して債権額を確定し、当該債権額を将来にわたり分割弁済することとするものです。
(2) 特定調停のメリットとデメリット
1. メリット
特定調停手続を利用するメリットは、任意整理手続きでは債権者の協力がなければ手に入らない過去の取引履歴を裁判所が提出を求めてくれる点と、当事者間では合意に至らない場合でも調停委員会による調停条項が示されればこれに従う債権者もいること、という特定調停手続自体によるメリットに加え、この手続が調停委員を介した当事者間の合意形成を内容とするものであるので、本人による申立でも十分に手続を進められるという点にあります。
2. デメリット
他方、特定調停手続は,当事者間の合意に基づいて進められる手続であるため、債権者がどうしても調停案に合意しない場合や(1) 3.の申立もない場合には調停を成立させることができませんし、調停が成立する場合にも、利息の引き直し計算による債権額の一部減額にとどまり、民事再生手続や破産手続のような劇的な効果は望めません(もっとも、高利の契約で弁済期間が長期にわたる場合は別です)。