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日本経済の不況連関構造とその最大のネガティブ要因からいち早く脱却しつつある大阪経済

2009年7月31日
室長 徳田 裕平

(1)日本経済の不況連関構造

ここ2回ばかり「大阪府・大阪市経済動向報告会」でも説明しているが、最近の日本の経済情勢をセクター相互の関連とともに概観すると図-1のようになる。まず、縦の中央列に示す最終需要の軸から説明する。上段には海外への輸出額を、下段には国内での消費額を、製造業・建設業とそれ以外に分けて2007、08年度に関して国民経済計算などを用いて推計した金額(名目ベース)を示す。上段の海外輸出額は、最終消費者は主に富裕層向けの商品であり、製造業では07年度で70.3兆円あったものが、08年度は59.8兆円にまで年間で落ち込んでいる。特に今年の1~3月期では前年同期比の下落幅は44.4%にまで達しており、製造業にとってはまさに「外需が消えた」くらいの未経験の衝撃であった。他方、下段の国内需要に関しては年間で1.8%の下落であり、海外の急落とは雲泥の差がある。

こうした海外需要の落ち込みは左列に示す企業活動へ当然インパクトを及ぼす。仮に設備として海外向けと国内向けが便宜的にあるとすれば、この水準が長引けば、海外向けの設備は半分程度で十分という計算になる。過剰設備に対して減損会計などの対処をする企業が多く出たことは09年3月期決算からも確認でき、理にかなったものである。当然、設備縮小に合わせて人的体制についても、派遣などの非正規社員には「雇い止め」などを、正規社員には週休3日制などを実施して、縮小した需要に見合う適正規模に合わせようとする。企業として長期にわたる赤字は企業自体の存続に関わる最重要な問題であり、縮小均衡を目指す動きはある意味当然であり、当分は続くと予想される。今年の経済財政白書において「雇用保蔵」なる言葉を用いて潜在的な過剰雇用者数を推計した結果、最大ケースで607万人に達するとの推計はショッキングであったが、上記の状況を如実に物語っている。問題は、企業からはじき出された非正規社員を中心とする元従業員で、失業者となる人も当然増える。

他方、需要の購買者となる右列の消費者について考えてみる。国内についてモデル的に高・中・低の3つの所得階層を考えてみる。まず、低所得者層では新たな失業者も加わって人数自体が増加するとともに、人余りの傾向から派遣単価等も下落するため、平均的収入は下がる。正規社員を中心とする中所得者層についても、企業業績の不振から賃金上昇は抑えられ、残業代・賞与も減る企業が多くみられる。正社員のリストラも一部の企業で実施されており、こうした人たちは低所得者層へとクラスダウンする。残る高所得者層に関しても、事業収益の低迷や株価下落などによる収入減・資産目減りが生じており、事業失敗による倒産で一気に低所得者層に転落する経営者も現れることになる。このように考えると、高級品が売れるはずもなく、企業がPB(プライベート・ブランド)など低価格路線にこぞって走るのは当然の成り行きである。しかし、この結果は当然、国内需要の縮小を招くように作用する。現に、1~3月期の下落幅は5.9%にも達している。海外の富裕層についても同様な状況を余儀なくされており、外需の回復は全世界的には当面あり得ないと考えられる。

日本経済はこうした不況連関構造にあり、避けるべきシナリオは国内需要の縮小が企業の減益・赤字トレンドを深刻化させ、次は国内向け設備・人員の縮小均衡を余儀なくさせるような負のスパイラルに陥ることである。このシナリオを回避し、経済の活力を取り戻すには、国内外で新たな潜在需要を掘り起こして創出するのが王道である。わが国政府もグリーン・ニューディールなどの緊急経済対策を矢継ぎ早に展開しつつあるものの、私にはこれまでの具体策がバラマキに思え、逆作用(例:フェリー事業)や不公平をもたらすとともに、需要の先食いで持続的効果に乏しいことが懸念される。同じ資金を投ずるのであれば相乗効果・持続的波及効果をもたらす戦略的工夫が不可欠であったと悔やまれる。このため、新しい国内市場・需要は当面、ハイブリッド車等の一部のグリーン分野などに限定され、推進力不足は否めない。したがって残された景気回復の牽引力は中国などの外需の成長に依らざるを得ないというのが悲しい現実である。


図-1 最近の不況の連関構造と需要の変化量

図-1 最近の不況の連関構造と需要の変化量

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