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他機関の注目発表

アジアの中で投資魅力を減じつつある東京・大阪!

『Emerging Trends in Real Estate Asia Pacific』
アーバンランド・インスティテュート(ULI)とプライスウォーターハウスクーパースLLP(PwC)

2010年1月18日

「不動産の新しい動向 アジア太平洋2010年」の最新調査結果が発表された。ここでは、この調査結果のポイントを示すとともに、過去4年分のバックナンバーを用いた分析を加えつつ、今後の大阪経済に関する私の着眼点を示す。

(1)「不動産の新しい動向 アジア太平洋2010年」のポイント〔HP発表より一部抜粋〕

世界的景気後退後のアジア太平洋市場で明るい兆し

本報告書はアジア太平洋地域の不動産投資や不動産開発の見通しを提供するとともに、世界的な景気後退の副次的な影響が懸念されるものの、東京の市場の潜在力は依然として高いと指摘しています。また本報告書は「外国人投資家は現在、困難な時代における質への逃避の一環として日本に向かいつつあります。また、危機の時代以外には市場に放出されることがまずないような優良資産の取得に目を向けている者もいます」と言及しています。

「Emerging Trends in Real EstateR」は、投資家、デベロッパー、不動産会社トップ、金融機関、仲介業者、コンサルタントなど、270名を超える世界的に著名な不動産専門家を対象にインタビューやアンケート調査を行い、その意見を反映してまとめたものです。

世界経済の崩壊以降、アジア太平洋地域の資産市場は欧米市場に比べ、驚くほどの堅調さを維持しています。2008年から2009年初頭にかけて不動産価格と賃料が急落した点では欧米と足並みを揃えたものの、アジア太平洋地域の市場は一連の財政政策・金融刺激策に支えられた中国経済の驚異的な回復力により、2009年後半に持ち直しました。

その結果、アジア市場の多くが2009年末に向けてポジティブな信号を発し始め、非常に低い水準からであったとはいえ取引量が反発しました。これには中国が占める割合が圧倒的に大きいものとなっています。

一部市場において価格を巡って買手と売手の間で手詰まり状態となり、また賃料が大きく変動しているものの、中国を中心にアジアでは総じて取引量が増加し不動産価格が上昇しています。

強気のムードに変わったとはいえ、大半のアジア太平洋市場で見られる回復は中国を除き、一時的でもろいものと見られています。各国政府は予測可能な将来において高い流動性を維持することができると思われるものの、アジア太平洋の短期的な見通しも、レバレッジの圧縮がまだ道半ばである欧米(特に米国)の動向と切り離すことができないといえます。欧米の経済見通しが不安定なことから、アジア太平洋市場での強い景況感も楽観を許さない状況にあると思われます。

■ 注目すべき市場

本報告書は、アジアの成長の見通しは中国とインドの力強い動きに対する予測によるところが大きいと指摘しています。ある投資家は「しばらくの間は購入機会があるだろう」と述べています。このことは不動産投資および不動産開発の見通しに対するインタビューおよびアンケートでの調査結果にもうかがわれます。

・上海、香港、北京は不動産投資の見通しにおける上位3位
・上海、ムンバイ、ニューデリーはそれぞれ不動産開発機会の1位、2位、4位
 (3位はホーチミンシティ)

(2)私の着眼点

① 国家間の経済再生のスピード差が都市の評価を2極化させた2010年

上記のポイントでも述べているように、2010年の評価結果を見ると、中国の強さが際立っていることが大きな特徴である。日本の都市としては、東京と大阪が対象20都市の中に含まれているが、この2都市を含めて、代表的な9都市について、2007年以降4回の評価ポイントの推移をグラフ化したのが図-1である。

この図で楕円は9都市の分布領域を示しているが、世界経済が堅調であった2007年評価(調査時点:2006年)から、08年、09年となるにつれて世界規模での金融危機が顕在化し、それにつれて投資リスクの増大懸念が高まったため、楕円は総じて左下方向、すなわち投資見通しも開発見通しも悪化する方向に遷移したわけであり、納得できる動きを見せている。他方、経済危機からの立ち直りが期待される2010年の楕円は09年を包含するように上下左右ともに拡がっている。このことから地域格差が一気に拡大した様子が明らかである。

具体的に2009年から10年にかけての推移を都市別にみてみよう。上海、北京、広州の中国3都市とソウルは右上方に遷移しており、投資と開発の見通しがともに高まっている。図には示していないが、これら4都市よりも小幅ではあるが、右上方に遷移した都市には、ジャカルタ、ムンバイ、ホーチミン、メルボルン、ニューデリー、クアラルンプール、そしてマニラがあり、インドやASEAN諸国に多いことがわかる。

逆に、大幅に左下方に向かったのが、実に東京と大阪だけなのである。東京と大阪の推移幅は開発見通しでは同等で、投資見通しでやや大阪が大きくなっている程度であるが、東京が09年ではトップクラスの評価を得ていたため、10年でも中位に位置しているのに対して、大阪は開発見通しで10年の最下位にランクされたのは衝撃である。このことから今年の特徴的な点は、金融危機以降における持ち直しスピードの期待値に関する国勢の差が如実に反映されていることである。

中国の不動産販売価格の前年同月比がプラスを持続させ、昨年12月には+7.8%に達した状況に比べ、東京圏・大阪圏を始めとしてわが国の地価が全面的に下落基調にあること(地価LOOKレポート)がそれを象徴している。

アジア地域に関する投資家調査が初めて実施された2006年は世界経済が5%成長を持続していた年であり、先進国、新興国ともに好調であり、投資意欲も活発であった。2007年版の東京・大阪の評価は投資見通し、開発見通しともにトップクラスであり、大阪は投資見通しポイントでは東京や上海を凌いで第1位に位置していたことから思えば隔世の感がある。


図-1 アジアの主要都市に関する投資および開発見通しに関する評価の推移

図-1 アジアの主要都市に関する投資および開発見通しに関する評価の推移

資料:「Emerging Trends in Real Estate Asia Pacific」の2007年~2010年版をもとに作成

②投資部門別にみた東京と大阪の投資魅力

①では投資家調査の総合的な評価結果を示したが、ベースには個別分野として、オフィス、ホテル、商業、産業・物流、および住宅等の5分野に分けて各都市を評価した結果がある。そこで、東京と大阪に関して、分野別にbuy(買い)評価の割合からsell(売り)評価の割合を差し引いたDI(ディフュージョン・インデックス)を算出して4ヵ年の推移を分析したのが図-2である。


図-2 東京と大阪に関する投資部門別評価をもとにしたDIの推移

図-2 大阪と東京に関する投資部門別評価をもとにしたDIの推移

資料:「Emerging Trends in Real Estate Asia Pacific」の2007年~2010年版をもとに計算して作成

この結果をみると、2007年から10年にかけて基本的には5部門ともに評価を落としていることがわかる。しかし、小幅ではあるが、09年から10年にかけて評価を上げた部門もある。それは東京に関しては住宅等で、大阪に関してはホテルである。東京の住宅等のDIは08年レベル近くまで回復しており、オフィスともども強気なポジションに依然位置していることがわかる。他方、大阪では5部門いずれもがマイナスゾーンにあり、全般に弱気モードである。大阪ではこの3、4年、都心ターミナルなど都市再生緊急整備地域やベイエリアにおいて、オフィス、商業ビル、大型物流拠点、高層マンションが数多く建設され、供給が過剰気味であるところに金融危機が襲来したため、弱気にならざるを得ないことは納得できる。その中で唯一ホテルのみが評価ポイントを上げている理由は、最近の建設ブームにおいてもホテルだけはさほど多くはなかったためであろう。

③日本の大都市の投資評価回復に向けて

①で述べたように、国勢の差が大都市への評価に大きく影響したのが2010年版の結果であった。したがって、この流れを日本に関して逆回転させるためには、日本の大都市に活気が戻ることが基本となるが、そのための戦略やロードマップがあまりにも見えてこないことが最大の問題である。

東京は首都であり、従来パターンのように国家的投資案件が都内に期待されることから、追随する民間投資に期待を寄せることができるものの、大阪に関しては自らが主体的に動いて都市の成長戦略を実行可能なレベルまでに練り上げ、推進するとともに、国内外の投資家などにPRする必要性がはるかに高いことは確かである。

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