遅ればせながら、新年おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
昨年は本調査会と関わりの深い大阪市行政に激震が走った年であり、当調査会もしばしば想定外の諸事に対応する機会を得ました。現在の市政改革の方向性を客観視すれば、「雨降って地固まる」的様相に思われ、これを着実に実行に移すことが肝要と考えます。
基礎自治体行政は、上下水道や市立病院、ゴミなどの厚生・環境事業、市バス、地下鉄などの公共交通事業、保育所・小中学校などの児童福祉・教育事業等々、様々な事業を通じて社会システムの一役を担っていますが、こうした各種事業の一部/全部が基本的には民間委託等の方向に傾くことで、都市経済的観点からも広範な産業部門に対して事業拡大や新規創業といった形でインパクトを及ぼすことが期待され、市場経済の活性化に寄与することとなりましょう。
今国会で「まちづくり三法」改正案が成立する見通しであり、これにより都市計画法が改正され、工業用地等の商業用地転用が原則できなくなるなどの規制強化が図られます。このように、行政は都市づくり、まちづくりをコントロールしうる唯一の主体と言えましょうが、「まちづくり三法」改正に関しては、2000年に施行された大店立地法による規制緩和との整合性に疑問をいだく方々も少なくないと思いますし、そもそも都市づくりにおける時間的スケールの近視眼的姿勢にこそ問題の根源があるのではないでしょうか。
年末にプライベートでイタリアの諸都市を駆け足で廻ってきましたが、ローマの旧市街ではこの50年間以上も新しい建物が建築されていないとのことです。イタリアに限らずヨーロッパの他都市でも行政の姿勢・努力により、数百年、いや一千年以上もさかのぼる都市的風景・風情が維持されているところがあり、日米の観光客を圧倒的迫力で魅了する観光資源となっています。翻って、日本の大都市を見渡してみれば、新築のビルやマンションばかりが目立ち、彼我の隔たりに愕然とする思いです。
大坂の都市の歴史は古く、日本書紀によれば聖徳太子の時代の難波は、瀬戸内海からシルクロードの終点:明日香を結ぶ竹内街道(丹比道)の基点として、多くの渡来人が住む国際都市であったようです。江戸時代には天下の台所として、堂島の米市場が国内米相場の基準となっており、世界に先駆けて先物制度を構築しました。また、米を銀貨に換金する多くの両替屋(現在の銀行)が繁栄し、北浜の金相場立会所では江戸で使用される金貨との両替も行われるなど、先進的な金融都市としても盛隆を極めていたことは比較的知られています。
しかし、「商いの都市」としての輝かしい歴史を有していることを原風景的に体感・実感できる施設は極めて限られており、ひっそりと石碑・記念碑があったり、せいぜい図書館や資料館等にてその面影を資料・写真として見るくらいしか手段がないのが現状です。これでは地元の小中学生や観光客に商都大阪を印象づけ、記憶に留めてもらうにはお粗末な状況と言えましょう。
ミケランジェロが絶賛したというサン・ジョヴァンニ洗礼堂(フィレンツェ)の正面を飾る「天国の扉」のレプリカは日本人事業家が資金提供したと聞きました。我が国企業の今年度決算では最高益を更新する好業績が予想される企業が少なくありませんが、大阪発祥の大企業やベンチャー企業の中から、海外の観光地ではなく、地元大阪に歴史の栄華を彷彿とさせる施設/拠点整備に資金協力する企業や事業家が続出することを願ってやみません。
ミラノ大聖堂が完成までに5百年を要したことを思えば、地道でも着実に商都大阪の再現を点の整備として積み重ね、それらがつながって線になっていくような超長期的なまちづくりを進める姿勢も、大都市の誇りとして、また、都市経済や教育、観光面からも重要ではないかと考えるこの頃です。
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