大阪産業創造館

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ご意見番コラム


携帯をめぐる Time is Money の三方よし

2009年10月26日
室長 徳田 裕平

京都へ行くことはさほどないが、ある時、帰りの阪急電車の特急の中で耳にした『携帯電話は周りのお客様にご迷惑ですのでご遠慮ください。』というアナウンスになぜか脳が反応した。普段は地下鉄に乗っているので、携帯は圏外のため、そもそも使用できず、そうしたアナウンスの必要性がないことから聞き慣れていなかったこともあろう。しばらくすると近くのご婦人の携帯が鳴り、会話を始めた。『・・・。今、電車の中だから。・・・』と2分くらい話していた。そこで、ふと感じた。「なぜ電車の中では携帯での通話を控えんとあかんのか -なんでやねん!?- 」

まずは、心臓ペースメーカーを装着している人へ誤作動をもたらす可能性を思い浮かべるのだが、最近の機種は技術進歩のおかげでペースメーカーに接触する距離でも誤作動を起さないレベルに達しているらしい。ペースメーカーの側にも電磁波の影響を低減させるフィルターが装着されているので、殆ど心配無用との意見もある。また、この観点から言えば携帯メールでも同じ影響を及ぼすので、会話に限って制限することは理に合わない。(ちなみに、阪急電鉄では先駆的に2003年6月より先頭と最後部車両を終日携帯電話電源オフ車両としており、それに習って、近畿地方の鉄道事業者では2004年2月から優先座席付近では携帯電話の電源オフ統一ルールを実施)

もう一つはうるさいから?確かに初期の携帯は感度も悪く、基地局の密度も低かったので、かつてはどなるような口調で通話している乗客をたまに見かけた。「迷惑な奴やな!」と内心思いつつ。そうした時代には『周りのお客様にご迷惑です』は事実だったし、良いことだった。

しかし、携帯が普及し始めて10年以上が経ち、技術・機能も格段の進歩を遂げている。基地局の密度・通信能力も改善された。でもアナウンスは数年前と同じく、そのまま流れている。隣国はどうだろう。韓国も中国も地下鉄の中ですら、がなりながら通話している。さて、我が国はどうすべきなのか。

色々な要因を総合すると、依然として耳障りと感じる人との軋轢を避けるためには、地上を長く走る特急電車のようなケースでは、車両を「携帯通話OK車両」などと限定し、明らかにした上で通話を許容する方向が多くのユーザーから支持を得られるのではなかろうか。面白いのは、阪急電鉄系の空港リムジンバスでは、「車内での携帯電話のご利用は、他のお客様のご迷惑にならないようご配慮お願い申し上げます。」とのアナウンスが流れている。TPOによって変わるということだろうか。これで良いと個人的には思うのだが。

近江商人の経営理念に由来すると言われる「三方よし」の理念は「売り手よし、買い手よし、世間よし」である。これを車内携帯電話のケースに当てはめると、売り手の通信キャリアは通話料収入が増えるし(機会損失は減る)、携帯の持ち主:買い手は車中で通話の必要性から来るストレス/イライラも減る。社会的には連絡遅延に伴う時間損失を回避でき、個人や企業のコスト削減などにもつながるなど、もたらされる便益も大きい。

「Time is Money !」ははるか昔から言われていた言葉であるが、社会のスピードが速まるなかで、時間当たりの価値は増大する一方である。そうした状況にあって、十年一日のごとく『周りのお客様にご迷惑です』しか許容できない鉄道会社は時代遅れと言わざるを得ないのではないだろうか。不況の局面にあって、ビジネスチャンスを逸しない社会システムをさほどのコストをかけなくても実現できる好例である。

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