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自転車のまち・若い世代にやさしい大阪

2009年10月15日
上田 恵美子

大阪市内のマンションに住む私の通勤時間は短く、郊外に住んでいた頃に比べれば本当に便利なったが、ときどき思わぬところで都会ならではの不便に出会う。高層マンションの中層階に住む私は、毎朝エレベータのラッシュに会う。エレベータが開くと、中はたくさんの小学生やゴミ袋を持ったサラリーマン・OLで埋め尽くされている。高齢化した郊外とは違った、活力ある都会の朝の光景かとあきらめる。

さらに、朝のラッシュに自転車ごとエレベータに乗っている主婦もいて、3人乗り自転車の補助席には子供がすでに乗っている。確かに自宅から子供を自転車に乗せてそのままエレベータに乗ったなら、一度に二人の子供をすばやく移動させられる。その主婦は、子供を保育所に預けたなら、おそらくそのまま自転車で職場に向かうのだろう。他の人がエレベータに乗れなくなることも起こるので主婦は肩身が狭そうにしているが、子育ての苦労を理解する大人たちは仕方がないかとほとんどが我慢する。

しかし、これからの活力ある大阪を考えたなら、自転車ごと乗り込めるエレベータや公共交通機関があって、逆に主婦たちが自転車ごと乗り込むのが当たり前と受け取れるような社会環境が必要と感じる。子育て世代が快適に生活できる住環境にはまだまだ工夫の余地がある。マンションの1階には1軒につき上下2台が載せられるラック式の駐輪所があるが、女性の力で上段に自転車を押し上げるのは難しく、ましてやいろんな付属品がついている3人乗りの自転車や電動自転車は重い。また、下段は3人乗りの自転車のように付属品が多い自転車は、車高が高くて納まりにくい。他の都市では3人乗り電動自転車を自治体が無償貸与する例もあるが、都市自体が自転車に対応できていなければ快適さは半減する。

ところで最近、若者はクルマに乗らないという記事が日経新聞(2009年8月23日)に掲載されていた。最近の若者はムダの排除への志向が強いらしく、普段の移動には自転車を使う人が増えているらしい。その若者たちの自転車をみると、小さなタイヤの洒落た自転車が多い。自転車はファッション性を高めつつあり、クルマに代わって若者のライフスタイルを主張するアイテムに加わった。また、健康志向やスポーツ志向といったライフスタイルから、スポーツタイプの自転車を選択する人も増えている。昔、同僚だったアメリカ人は会社の交通費支給を断って、スポーツタイプの自転車に乗ってスーツ姿にリュックで通勤していたが、そんな彼の姿は型にはまらない自由な社会環境を連想させた。日本も成熟社会に仲間入りするようになり、クルマを買えないので仕方なく自転車に乗るという時代から、移動手段としてあえて自転車を選択する時代へと変わってきた。ヨーロッパでは自転車道のインフラ整備が進んでいるようだが、成熟した社会が選択した乗り物という魅力が自転車には感じられる。

大阪が自転車のまちになるには、道路・駅以外にも求められるものが多い。先に述べたようなマンション等の工夫、自転車で簡単に入れる商業施設やアミューズメントパーク、雨の日でも走行できる服装や装置の工夫、子供の成長に合わせた自転車のリサイクルや自転車の共有システム、今後の増加が見込まれる電動自転車のチャージ設備や防犯システムなどに加え、生活のすべての場面において若い世代が好むようなデザイン性も重視される。気候や地形的などのさまざまな条件から見ても大阪ほど自転車で走りやすい都市は少ないのではないかと思う。都市ぐるみで新しいライフスタイルを提案することで、若い世代の定住を促進し大阪が活性化されることに期待したい。

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