21
  
    突入した不況期の数字の見方 ─大阪の住宅着工を例に─
    ~元データから実態をあぶりだす習慣づけをしよう!~

 最近の新聞は「前年比○%ダウン」などの表現がやたらと目につきます。日本経済は数年続いた景気回復軌道から昨年に反転し、9月以降はエアポケット的に急落しているので当然と言えます。平成19年11月から始まった景気後退局面から早1年半を迎えようとしていますが、不況に転じて2年目以降のデータは「前年比△%アップ」を鵜呑みにすると判断を誤る可能性が大きくなるのです。なぜなら前年に落ち込んだ状況が基準となっているからです。

 景気の例ではないですが、具体的に耐震偽装を発端として平成19年6月20日に改正された建築基準法による影響を例に検証してみましょう。大阪市の着工新設住宅戸数の推移を前年同期比でみれば19年5-6月は改正前の駆け込み需要のため10日間のハンディにもかかわらず前年比+20%であり、9-10月以降、20年1-2月までは前年比-の水準が続きましたが、3-4月と9-10月は前年比+11%、28%となっています【図1】。しかし、これをもって「住宅は回復基調」と思うのは早計です。20年に関して法改正前の前々年同期比の推移をみれば依然低調で、9月以降は一段と低迷しています。このようにトレンド変化が生じた後の「前年比」は要注意です。

 また、「不況でモノが売れない」とする報道を例に挙げますが、決してすべてのモノが売れていないわけではありません。小売店の平成20年10~12月の売上高を商品群別・業態別に前年と比較すると、商品の購買サイクルと減少率との関係や消費者の業態使い分けの実態が浮き彫りとなります【図2】。すなわち乗用車や家電に代表される購買サイクルが数年の商品は、大半の消費者がすでにその商品を所有していて、不況で将来が不透明なこの時期にあえて買い換えなくても生活できるという側面があり、そのために前年同期比の下落幅も大きくなっているのです。

 他方、日常生活での消耗品的性格の強い商品は単価は下がっても量としては殆ど変わらないので小幅な下落にとどまっています。また、高級品を揃えている百貨店の方が大きな下落幅となっています。これらも元データに戻って事象を捉えれば正確に実態が見えてくる例です。

 上記は商品、すなわち、何を:Whatに着目した分析ですが、どこで:Where、誰が:Who、いつ:When、どのように(ネット通販など):How、いくらで:How Much、モノを購入しているのかを分析しても好不調が分かれる結果が得られましょう。最終的にはそうした現象がどうしてきているのか:Whyを突き詰めていくことで、不況に立ち向かうヒントが得られるものと考えます。

 今回で「数字で見る経済」も最終回を迎えました。終わりにあたり、数字の見方として私が普段、心がけている姿勢を述べました。長らくありがとうございました。 

【図1】大阪市の着工新設住宅戸数の最近の推移



資料:(財)建設物価調査会「建設統計月報」

 


  左グラフ
  元データはこちら>>

【図2】商品群別・業態別にみた売上高の減少率(20年10~12月期)と
     購買サイクルの関係



注:自動車のみ販売台数、その他は販売金額の対前年同期比増減率
資料:日本百貨店協会「全国百貨店売上高概況」、日本チェーンストア協会「チェーンストア販売統計」、
    (社)日本自動車工業会「自動車統計月報」、(社)日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」

 左グラフ
  元データはこちら>>
 

印刷画面

ご意見・ご感想はこちらへ

 

|大阪都市経済調査会 事務局 : osaka_econ@tyosakai.jp (06)6264-9815 |
大阪都市経済調査会ホームページに掲載の文章・イメージなどの無断転載を禁止します。
Copyright (C) 2005. Urban Economic Research Institute of Osaka All Rights Reserved.