国内香料の歴史を育む業界の先駆者
ファインケミカル分野にも進出
プレゼンの際にはサンプル品を持参。わずか1オンスの小瓶には研究者の分析力や技術力が詰まっている。
1921年、わが国で初めて食品エッセンスの工業化生産を成功させたのが塩野香料。当時、香料と言えば化粧品などに使われる“フレグランス”が中心だったが、開発にかける熱意とたゆまぬ研究心によって、ついに“フレーバー”を完成させた。
レモンの香りがするフレーバーは、ラムネやサイダーなどの清涼飲料に使われ一気に広まることになる。その後、現在に至るまで、日本の食品香料の発展は同社の長い歩みとともにあるといっても過言ではない。食品に香りだけでなく味までも付加する“呈味(ていみ)香料”にもいち早く参入し、インスタント食品や冷凍食品などさまざまなジャンルの加工品に採用されている。
一方、フレグランスの分野でも研究を進め、化粧品会社との共同研究でキク科の植物から肌の老化抑制効果が期待できる香りを開発。また、クレオパトラが愛したと言われる香り“キフィ”を当時の文献を読み解いて成分を抽出するなど、業界への高い貢献度を誇る。
「得意先に合わせ、商品開発の段階から香料の提案をしています。オンリーワン商品のお手伝いをするのが、私たちの役割」と塩野氏。要望に沿ったオリジナル製品はもちろん、コストダウンの声に応える汎用性の高い香料も生産している。
こうした高度な技術力を応用し、現在ファインケミカル分野にも注力。医薬品の原薬を製造する子会社『塩野フィネス』を設立し、GMP適合製品を厳しい品質管理体制のもとで生産する。米国FDA当局より医薬品原薬製造施設として「適合」であるとの判定を受けたことをはじめとし、ヨーロッパや韓国にも市場を拡大している。
優れた研究者たちの努力と先見性のある開発力。バランスの良い両輪を持つ塩野香料のさらなる成長に期待したい。
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