自社ブランドで攻めに転じ職人技のドラムで世界トップシェアに挑む
自社ブランドのドラム「SAKAE」。高級感が漂うデザイン性が人気を博している。
世界トップ10に入るドラムメーカー。シェア上位の国内メーカーが相次いで海外生産にシフトする中、サカエリズム楽器は国内生産を守り続けている。東住吉区の工場では、ドラムの胴に当たる“シェル”に使う板を型にはめ、丸く曲げる作業が丹念に行われていた。接着剤は、季節や天候で配合を微妙に変える。「単純な構造だからこそ、一つひとつの工程に対する手間のかけ方で音に差が出る」と中田氏は言う。
祖父が楽器の輸入商を始めたのは、日本でラジオ放送がスタートした1925年。その後、ドラム製造を自ら手がけ、1965年頃には、大手楽器メーカーと取引が始まった。現在、その楽器メーカーが販売する高級ドラムのすべてをOEMで供給。2005年に母からバトンを受け社長に就任した中田氏は、長年温めていた自社ブランドの立ち上げを実行に移した。
OEMの供給先に配慮すべき、と社内には反対する声もあったが、「自分が思い描くドラムを形にしてみたい」と意志を貫いた。要である“シェル”の材料には従来とは違う高級木材のマホガニーやブビンガを用いて差別化を図り、チューニングしやすいようネジの締めやすさにも配慮した。またドラムの裏側にある中央の帯状のパーツであるスナッピーの張り具合を変えるストレイナーの操作感にもこだわった。ドラムを扱う国内の楽器店を中心に取り扱いを増やしているが、2010年1月に米国ロサンゼルスで開かれる国際楽器見本市「NAMMShow」で「SAKAE」ブランドの世界デビューも果たす。「3年後には自社ブランド製品を全売上げの半分にまで高め、6年後には高級ドラム市場で世界シェアトップをめざします」。
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