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健康商品の有効性と安全性を伝えるときのポイント

第8回:不況下での健康関連商品に大切な企業理念


クレームのない商品を求める時代

筆者は健康商品というなかでも、とりわけ食品企業の方と会って話をすることが多いのですが、最近特に印象に残る言葉がありました。「健康機能の表示規制、クレーム(賞味期限や産地表示)と自主回収を考えると、食品業界はリスクだらけ。一番のリスク対策は食品事業から撤退することだ。」と言われた話です。

この意見に同調される経営者の方は多く、これが食糧自給率40%(※)と言われる日本、また地域再生のカギと農業ビジネスに注目が集まる日本にとって、大きな問題ではないかと思う時があります。(※自給率の低さを啓蒙する農林水産省発表によるカロリーベース数値。反対に自給率の低さを問題としない論説もあります。)

流通のバイヤーに商品提案をするも、「なるべくクレームの来ない商品」を歓迎する風潮が年々強くなり、パッケージ表示の「厳選素材使用の『厳選』の根拠資料を提出してほしい」「『スペシャル』の根拠を示してほしい」など細かい裏づけ(証拠)を求めるケースが以前よりも増えてきていると、商品表示作成の現場にいて感じています。

証拠主義と安全性

こうした風潮の中では、「言っていることと中身の整合性がとれているか」が重視されるようになってきています。例えば使用した素材の割合(成分含有量等)や由来(産地、グレード等)であるとか、使用方法(賞味期限や保存方法の設定、1日10分間使用、1日3粒を目安に摂取等)に、合理的な根拠があるかどうかです。

例えば、これらを数値で表すことで説得力を増したい企業側と、この数値が本当であるかどうかを検証しようとする行政(取締り)側の立場があるとします。企業側はよく自社調査した結果を数値としてパッケージや広告に使用しますが、検証側が別の検査機関で内容を調査した場合、必ずしも近い結果が出てくるとは限りません。(例えば食品素材では、分析方法が同じであっても検査に使用した検体の量や状態により数値結果にバラつきが出ることがあります。)

また安全性という面で、使用した素材が安全性を確保できているかについてはPR上必要ですので、いろいろと情報を集めて準備されることが多いのですが、実際の最終製品として使用した際の安全性根拠までは、あまり準備していないこともよく見られます。前述した使用方法(どのように使うのか、どれくらい摂取するのか等)の根拠にもなりますので、例えば規定以上に使用した場合の注意点や想定される危険性などについては、思わぬクレーム発生時にも迅速に対応できるようになりますので、十分調査したうえで知らせておくことが大切です。

有効性表現に対する2つの考え方

安全性について現場から見た状況をお伝えしましたが、そうはいっても健康商品において訴求の第一ポイントは「有効性」であるのは変わりません。この不況と呼ばれる時代にあっても、過去最高の売上を達成している企業も多くあります。そんな好調な企業の、有効性表現に対する考え方には大きく2タイプあると感じています。

1) 商品型

通販の健康商品に多いタイプで、商品素材の単独訴求で一気に売上を追求します。従来でいう「プロダクト・アウト」と呼ばれる手法に近いのですが、現在の健康商品市場では少し事情が違う場合もあります。まず現行の規制下で使用できる有効性表現を設定し、商品開発を進め、いずれ規制がかかるまでテレビCMなどで一気に売る方法などがそうです。 投資規模によっては100億円のレベルまで売れるケースもありますが、その分下がり幅も大きく、さらには新たな規制を生み出す可能性もあります。商品素材が一旦市民権を得れば、その後は収縮しながらも安定した市場を残すこともあるのですが、反対にバブル(いずれ規制が増え「昔はできたけど今は通用しなくなること」)で終わることもあり、後に続く企業にとってはかなり厳しい状況を残すこともあります。

2) テーマ型

企業のこだわりによって開発された、もしくは集められた商品を売るものです。上記1)の商品型は商品素材の単独訴求のため模倣しやすく追従企業も多くなりますが、このテーマ型は企業や店舗の考え方により設計されていますので、差別化しやすく比較的安定成長をめざすことができます。有効性に関する表現も、テーマがあるためにあまり危険を冒す必要がないのが特徴ですが、新しい素材の機能性を啓蒙するときは通常どおり苦戦します。 こうした企業の顧客は、ブランドの考え方(テーマなどのこだわり)によってファンになっているため、大きく一般化されることを望んでいないことに原因があると思いますが、上記1)の商品型のレベルまで飛躍的に売上が上がるケースは少なく、一般的に中小企業向きのタイプと考えられます。

不況下で大切になる企業理念

中小企業の方には、上記で言えば2)のテーマ型であることをいつもおススメしております。ただビジネスとしても長く続ける必要がありますので、短期にという方は1)を検討されても良いと思いますが、後に続く企業への配慮も大切なポイントだと思います。どちらのタイプを志向されてもよいのですが、ブランドの基礎となる企業理念、つまり哲学のようなものが、より重要になってきていると感じています。何のために、この商品を作ったのか。何のために、この商品を売るのか。市場や経済への影響も考えたうえで、全体としてどうあるべきかを常に考えている企業が、この不況下でもやはり伸びていると、周囲を見回しても改めて気付くことができます。

転職活動が自由にできるインフラも整っている現在では、従業員に対しどのように理念を伝え、教育するかが商品を販売する上でも重要な基礎部分であると感じています。そのうえで実際の品質をともなっていることが大切です。内側から品質の実態を知る従業員が話す言葉~例えば「うちの会社の商品は実際に書いてあるほどの機能は確認していないようだ」と家族や友人に話す言葉~は、どんな広告よりも影響力が長く続き、真実味を持って伝わってゆくものです。

理念や哲学、社会への配慮、表示内容を裏づける品質が揃って初めて、この不況と呼ばれる時代であっても、通用する商品とブランドが出来上がってゆくのではないかと思います。これで景気回復に一役買うのであれば、過剰なクレームも落ち着き、企業側も改めて挑戦しやすい環境になるといった好循環をめざしていくという考え方も、大切ではないでしょうか。

著者プロフィール
川合裕之 氏

川合裕之(かわいひろゆき)氏

株式会社ラベルバンク 代表取締役

即席ラーメン会社のサラリーマン、ラーメン屋のアルバイト、メロンパンの移動販売 開業と閉鎖を経て、食品の空き容器を収集しながら「食品表示・広告表現の課題解決 企業株式会社ラベルバンク」を設立(2003年)。
インターネットショッピングサイト上に食品品質表示が掲載されていない点にチャン スを感じ、「食品の品質表示は見せた方が得と考えている食品メーカーに、複雑な食 品表示のアドバイスや、品質情報の効果的な見せ方を提供する」コンサルティングを 展開するが、科学的根拠よりも大切なポイントがあることに気付く。
健康食品の品質表示・薬事法規制をテーマに官公庁・展示会等全国で講演多数、食品 専門誌(月刊食品包装等)で執筆。

編集人:北口 編集責任者:武坂

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