◆研究シーズの概要◆
どの現場にもほぼ例外なくマニュアルがあり,それがあれば製造や作業の手順は保存され,再現できると考えがちであるがそうではない.
実際は,同じマニュアルを参照して同じ企業で製造しても,不良品の発生率や,そもそもの製品の出来栄えが,製造する人によって異なる.
現場のマニュアルは,その現場で働く,いわばその作業の専門家が利用することを想定して作られているために,専門家の間で常識であることについての記載が無いことである.
現場のマニュアルに暗黙知が記載されていないことは,DXが進まない原因となってしまっている.
協働ロボットとは,人間が働く現場で,安全柵なしで人の作業を支援できるロボットのことである.
しかし協働ロボットは,導入のコストが高いため,現状では普及が進んでいない.
中小企業では,製造ラインの変更が頻繁に発生するため,その変更の度に協働ロボットをメンテナンスする必要があり,更にコストがかさんでしまう.
そこで,筆者らは,協働ロボットの導入コストを下げることを目的として,非専門家でも理解可能で,専門家と同じ作業ができるようになるためのマニュアル,すなわち,非専門家向けマニュアルの研究を進めている.非専門家向けマニュアルがあれば,一般の企業が,SIerへあまり頼らずに,自分たちの手で協働ロボットを導入できるようになる.また,この仕組みを実現できれば,協働ロボット導入のコストから,SIerへの支払い分を削減できるため,より多くの現場が,協働ロボットを導入できるようになり,協働ロボットの普及と,DXの進展に繋がるのではないかと期待している.
本講演では,現場ノウハウを活用するために獲得,保存することの難しさと,筆者らが現在取り組んでいる協働ロボット組立の分野における非専門家向けマニュアルの作成と,期待されるDXについて,狙いと現状を説明する.