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経営者保証ガイドラインの適用要件についての留意事項、保証解除の際の考慮事項、残存資産の考え方について

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  • 経営者保証ガイドラインの適用要件についての留意事項、保証解除の際の考慮事項、残存資産の考え方について

    経営者として法人の債務の連帯保証を行っていますが、経営を退く場面として、例えば、事業承継で後継者に事業を引き継ぐ場合や、法人が債務を返済できずやむを得ず廃業に至る場合において、保証債務はどのように扱われるのでしょうか。

    経営者保証ガイドラインの適用を前提に債権者と協議を行うことができます。これにより、債務超過の法人の場合でも保証人は一定の残存資産を残すことが可能となります。



    (1)事業承継等の場合
     事業承継は、現経営者から、その子、会社役員、従業員又は社外の取引先等へ会社の事業を引き継ぐことを言いますが、その際、現経営者の保証解除と後継者の保証契約の締結が問題となります。この際、債権者側の対応としては、経営者保証ガイドライン(以下「GL」といいます。)第6項(2)②に記載があり、後継者との保証契約締結について十分に必要性等を検討したうえで丁寧に説明することが求められており、また、前経営者の保証解除について適切に判断することが求められています。
     この点、「中小企業白書」(中小企業庁)や「「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績」(金融庁)によれば、事業承継時の保証契約の二重徴求(後継者と新規保証契約を行い、かつ前経営者の保証契約を解除しないこと)の件数の割合は、減少傾向にあり(2016年下半期の46.2%から2018年下半期の17.9%へ減少)、GLの浸透が図られているものと考えられます。とはいえ、「「経営者保証に関するガイドライン」等の実態調査結果」(金融庁)によれば、金融機関ごとに取扱いは大きな差がありますので、事業承継の際には取引金融機関と十分に協議することが必要と思われます。
    (2)債務超過の場合
     法人が債務超過であり法人の整理(法的整理又は私的整理)が行われる場合、債権者の保証履行請求が顕在化することになりますので、連帯保証人は、自己の私財をもって弁済する義務を負うことになります。
     このような場合の残存資産の目安について、GL第7項(3)③に記載があります。当面の生計費として、破産手続の場合の自由財産として認められる99万円と、民事執行法上の1か月の標準的生活費の目安が33万円なので、これに雇用保険の給付期間で、年齢や勤続年数で変動する月数(3〜11月)をかけた合計額で、概ね300〜400万円台の金額になってきます。「華美でない自宅等」も残せるとされており、一般的な住宅であれば残す余地は十分あるものと思います。とはいえ、法人の債務で担保に入っている自宅は残せませんので、通常は親族等が買取して、その家を貸してもらって住み続けることが多いと思います。
     「華美でない自宅等」に「等」がついているところの解釈にも関わりますが、法人の整理と一体なものと評価し、このまま破産に至った場合の法人と保証人の清算価値(破産して債権者に配当できる価額)と、早期に事業を承継又は廃業させることで得られる経済的価値の増加分との差額を残存資産の許容額として考慮できるので、その残存資産の許容額の範囲内であれば、保証人の残存資産の必要性、例えば、高額医療費、子供の学費など、根拠を説明し債権者が了解するものであれば、当面の生計費と合わせて、1000万円を超えるような資産を残せる事例もあります。
     なお、金融機関としては、債権放棄を伴う処理となりますので、損金処理上、課税当局から指摘されるリスクを軽減するため、再生支援協議会、REVIC、ADR、特定調停等、公正な第三者が関与するスキームで処理を要望してくる場合が通常ですので、法人の債務整理と一体として経営者等の保証解除の処理を行う場合には、そのような手続きに詳しい専門家に相談することが肝要と思われます。
    (3)ガイドライン適用に当たっての留意点
     失礼かもしれませんが、中小企業であれば、会計処理の不備は多々あろうかと思います。例えば、在庫の水増し、架空売り上げ、滞留債権の未処理など、このような不適切な会計処理がなされている法人の保証人にGLが適用できるのか問題となります。
     GLの適用前提条件には、財産状況等(負債の状況を含む。)について適時適切に開示していることが含まれますので、この条件に抵触しうることになります。つまり、経営者等が指示して粉飾処理をしていたような事案で問題になります。
     GLが適用できないと、任意で保証解除できませんので、破産せざるを得ない状況になりかねません。この点、GLのQ&Aでは、粉飾決算みたいなことがあっても、直ちにGLの適用を否定しないで、総合的に勘案して判断しましょうというような表現となっており、不適切な会計処理の内容や程度によって判断がなされるものといえます。

回答した専門家
法律(弁護士)

岸野 正

専門的な知見を分かりやすく説明し、親しみやすい運営を心掛けておりますので、ご...

技術系の素養に加え、弁護士として10年以上の経験があり、主に中小企業向けの企業法務の相談を行っております。また、中小企業支援や地域経済活性化を目的として設立された株式会社地域経済活性化支援機構へ出向し、シニアマネージャーとして中小企業支援業務に従事しておりました。これまでの知見を活かし、中小企業の悩みやトラブルについて最善の解決を目指して相談者の皆さまと一緒に考えたいと思います。

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弁護士
中小企業診断士

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中小企業に対する企業法務(株主総会指導、法律相談、契約書...

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