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「兄弟仲良く平等に」は争いのもとー後継者への株式移転のポイント

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  • 「兄弟仲良く平等に」は争いのもとー後継者への株式移転のポイント

    私は中小企業の経営者で,全株式を保有しています。息子が3人おり,後継者は長男にしようと思っています。妻は亡くなっています。私が亡くなっても兄弟仲良く,力を併せて暮らしてほしいので,株式を含め,財産は平等に分けてほしいと思っていますが,それでいいでしょうか。

    相続になれば極めて不都合な状態になります。後継者に株式を集中させることが必要です。


    1 株式移転対策の必要性
     相続が発生した場合,遺産分割協議が整うまでは,各株式を相続人が準共有することになります。ご質問のケースでは,株式ごとに,3分の1の割合で,共有する状態になります。当然に3分の1の数の株式を取得すると勘違いしている方が多いですが,そうではないので,ご注意ください。このような株式準共有状態の場合,権利行使者を定めて会社に通知しないと権利行使できません(会社法106条)。権利行使者を決めるのは,持分の過半数によりますので,ご質問のケースで,仮に全員が対立した場合には,代表者を決めることもできず,権利行使できなくなります。
     仮に法定相続分どおりに株式を分割したとしても,会社の重要事項を決する特別決議には,3分の2以上の株式が必要ですから,後継者に株式が集中していないと,会社の重要事項の決定が滞り,会社経営が立ちいかなくなるおそれがあります。
     そのため,経営者は後継者に対し,生前贈与や遺言等の形で,きちんと株式を移転しておく必要性が極めて高いといえます。
    2 株式移転の方法
     まず,経営者が生前に株式を後継者に譲る方法として,売買による方法と贈与による方法があります。売買による場合は後継者が買取資金を調達することが課題になります。贈与の場合は贈与税の負担が問題になります。会社が利益を内部留保しているような場合は,高額の贈与税を負担しなければなりません。暦年課税のみならず相続時精算課税という制度の活用も考える必要があります。
     また,経営者の死後に株式移転する方法として,遺言や死因贈与といった方法があります。この場合には遺留分対策が大きな問題になりますので,後継者以外の兄弟に対し,株式以外の財産を移転すること考える必要があります。遺留分については中小企業経営承継円滑化法により民法の特例が設定されていますが,あまり利用されていません。また,相続税の問題もあり,節税だけでなく,納税資金の準備も課題になります。

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